無機化学 / chlorine_chloride

塩素・塩化水素・塩化物

塩素 Cl₂、塩化水素 HCl、塩酸、塩化物イオン Cl⁻、塩化物の沈殿反応、漂白作用、殺菌作用をまとめた教材です。
難易度:標準 目安:45分
# 無機化学 # 塩素 # 塩化水素 # 塩酸 # 塩化物

この教材で学ぶこと

到達目標

  • 塩素 Cl₂ の性質と製法を説明できる
  • 塩素の酸化作用・漂白作用・殺菌作用を説明できる
  • 塩化水素 HCl と塩酸の違いを説明できる
  • 塩化物イオン Cl⁻ の検出方法を説明できる
  • AgClの白色沈殿とアンモニア水への溶解を説明できる

前提知識

  • ハロゲン
  • 酸化還元
  • 気体の製法
  • 銀とその化合物
  • 酸・塩基
目次

1 塩素とは

塩素 Cl₂ は、ハロゲンに属する元素の単体です。
常温では黄緑色の有毒な気体です。
刺激臭をもち、吸い込むと危険です。
塩素は強い酸化作用をもち、漂白作用や殺菌作用にも関係します。
高校化学では、塩素の製法、酸化作用、漂白作用、水との反応、塩化物イオンの検出が重要です。
塩素の基本情報
項目 内容
化学式 Cl₂
名称 塩素
分類 ハロゲンの単体
黄緑色
におい 刺激臭
毒性 有毒
重要な性質 酸化作用、漂白作用、殺菌作用
確認ポイント
  • 塩素の化学式がCl₂であることを答えられる
  • 塩素が黄緑色の有毒な気体であることを説明できる
  • 塩素がハロゲンの単体であることを理解している
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2 塩素の実験室的製法

塩素は、二酸化マンガン MnO₂ に濃塩酸 HCl を加えて加熱することで発生させることができます。
この反応では、二酸化マンガンが酸化剤として働き、塩化物イオン Cl⁻ が酸化されて塩素 Cl₂ になります。
発生する塩素は有毒なので、実験ではドラフト内で扱う必要があります。
塩素は水にある程度溶け、空気より重い気体です。
そのため、捕集方法や安全面もあわせて問われることがあります。
二酸化マンガンと濃塩酸
MnO₂ + 4HCl → MnCl₂ + Cl₂ + 2H₂O
塩素の実験室的製法です。MnO₂が酸化剤として働きます。
塩素の発生と捕集
項目 内容
原料 MnO₂と濃HCl
操作 加熱
発生する気体 Cl₂
気体の色 黄緑色
水への溶解 ある程度溶ける
空気との比較 空気より重い
注意点 有毒なので吸い込まない
例題:塩素の実験室的製法で使う酸化剤は何か。
答え:二酸化マンガン MnO₂
MnO₂が塩化物イオンを酸化し、塩素 Cl₂ を発生させます。
確認ポイント
  • 塩素の実験室的製法の反応式を書ける
  • MnO₂が酸化剤として働くことを説明できる
  • 塩素が有毒な気体であることを理解している
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3 塩素と水の反応

塩素は水に溶けると、一部が水と反応します。
この反応では、塩化水素 HCl と次亜塩素酸 HClO が生じます。
次亜塩素酸 HClO は強い酸化作用をもちます。
塩素水が漂白作用や殺菌作用を示すのは、この次亜塩素酸の酸化作用が関係します。
塩素そのものだけでなく、塩素が水と反応してできるHClOが重要です。
塩素と水
Cl₂ + H₂O ⇄ HCl + HClO
塩化水素と次亜塩素酸が生じます。HClOが漂白・殺菌作用に関係します。
塩素水のポイント
物質 役割・性質
Cl₂ 水に溶け、一部が水と反応する
HCl 酸性を示す
HClO 酸化作用をもち、漂白・殺菌に関係する
注意:塩素の漂白作用は、湿った状態でよく現れます。
注意:乾いた塩素よりも、塩素水や湿った塩素のほうが漂白作用を示しやすいです。
確認ポイント
  • Cl₂ + H₂O ⇄ HCl + HClO を書ける
  • 次亜塩素酸HClOが漂白作用に関係することを説明できる
  • 塩素水が酸性を示すことを理解している
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4 塩素の漂白作用と殺菌作用

塩素には漂白作用があります。
これは、塩素が水と反応して生じる次亜塩素酸 HClO の酸化作用によるものです。
HClOは色素を酸化して変化させるため、色が消えたように見えます。
また、HClOは殺菌作用をもつため、水道水の消毒や漂白剤にも関係します。
ただし、塩素や塩素系薬品は有毒・刺激性があるため、扱いには注意が必要です。
塩素の作用
作用 原因
漂白作用 HClOの酸化作用 湿った色紙の色を消す
殺菌作用 HClOの酸化作用 水道水の消毒
酸化作用 電子を奪う性質 I⁻をI₂に酸化する
例題:塩素水が漂白作用を示す主な理由を答えよ。
答え:次亜塩素酸HClOの酸化作用によるため。
Cl₂ + H₂O ⇄ HCl + HClO によりHClOが生じ、色素を酸化します。
確認ポイント
  • 塩素の漂白作用が酸化作用によることを説明できる
  • HClOが殺菌作用に関係することを説明できる
  • 塩素系薬品の扱いに注意が必要であることを理解している
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5 塩素の酸化作用

塩素 Cl₂ は、ハロゲンの中でも酸化剤として重要です。
塩素は電子を受け取って塩化物イオン Cl⁻ になりやすいため、相手を酸化します。
たとえば、塩素は臭化物イオン Br⁻ やヨウ化物イオン I⁻ を酸化して、臭素 Br₂ やヨウ素 I₂ を遊離させます。
これは、ハロゲンの酸化力の違いを利用した反応です。
酸化力は、一般に F₂ > Cl₂ > Br₂ > I₂ の順に強いと整理します。
塩素が臭化物イオンを酸化する反応
Cl₂ + 2Br⁻ → 2Cl⁻ + Br₂
塩素がBr⁻を酸化してBr₂を生じます。
塩素がヨウ化物イオンを酸化する反応
Cl₂ + 2I⁻ → 2Cl⁻ + I₂
塩素がI⁻を酸化してI₂を生じます。
ハロゲンの酸化力
順番 酸化力
F₂ 最も強い
Cl₂ 強い
Br₂ Cl₂より弱い
I₂ 最も弱い
注意:酸化力が強いハロゲンほど、他のハロゲン化物イオンから電子を奪いやすいです。
注意:Cl₂はBr⁻やI⁻を酸化できますが、I₂はCl⁻を酸化できません。
確認ポイント
  • 塩素が酸化剤として働くことを説明できる
  • Cl₂ + 2I⁻ → 2Cl⁻ + I₂ を説明できる
  • ハロゲンの酸化力の順番を理解している
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6 塩化水素 HCl

塩化水素 HCl は、無色で刺激臭をもつ気体です。
水に非常によく溶けます。
塩化水素が水に溶けた水溶液を塩酸といいます。
つまり、HClという気体そのものと、その水溶液である塩酸を区別することが大切です。
塩化水素はアンモニア NH₃ と反応して、塩化アンモニウム NH₄Cl の白煙を生じます。
塩化水素の電離
HCl → H⁺ + Cl⁻
水に溶けると電離し、塩酸は強酸性を示します。
塩化水素とアンモニア
HCl + NH₃ → NH₄Cl
白煙の塩化アンモニウムが生じます。
塩化水素と塩酸
項目 内容
HCl 塩化水素。気体
塩酸 塩化水素が水に溶けた水溶液
水への溶解 非常によく溶ける
水溶液の性質 強酸性
NH₃との反応 NH₄Clの白煙を生じる
確認ポイント
  • HClが塩化水素であることを答えられる
  • 塩酸がHClの水溶液であることを説明できる
  • HClとNH₃でNH₄Clの白煙が生じることを説明できる
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7 塩化水素の実験室的製法

塩化水素は、塩化ナトリウム NaCl に濃硫酸 H₂SO₄ を加えて発生させることができます。
この反応では、塩化水素 HCl が気体として発生します。
HClは水に非常によく溶けるため、水上置換では集められません。
また、HClは空気より重いため、下方置換で集めます。
塩化水素は刺激臭をもつ気体なので、実験では吸い込まないよう注意します。
塩化ナトリウムと濃硫酸
NaCl + H₂SO₄ → NaHSO₄ + HCl
塩化水素の実験室的製法として扱われます。
全体式としての表し方
2NaCl + H₂SO₄ → Na₂SO₄ + 2HCl
条件によってこのようにまとめて表すこともあります。
塩化水素の発生と捕集
項目 内容
原料 NaClと濃H₂SO₄
発生する気体 HCl
水上置換 不可。水に非常によく溶けるため
空気との比較 空気より重い
捕集方法 下方置換
注意点 刺激臭があり、吸い込まない
確認ポイント
  • 塩化水素の実験室的製法を説明できる
  • HClを水上置換で集めない理由を説明できる
  • HClを下方置換で集める理由を説明できる
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8 塩酸の性質

塩酸は、塩化水素 HCl が水に溶けた水溶液です。
塩酸は強酸であり、水溶液中でH⁺とCl⁻にほぼ完全に電離します。
亜鉛 Zn やマグネシウム Mg などの金属と反応して水素を発生します。
また、塩基と反応して中和反応を起こします。
塩酸は実験でよく使われる基本的な酸ですが、腐食性があるため取り扱いには注意が必要です。
亜鉛と塩酸
Zn + 2HCl → ZnCl₂ + H₂
亜鉛が塩酸と反応して水素を発生します。
水酸化ナトリウムとの中和
HCl + NaOH → NaCl + H₂O
酸と塩基が反応して塩と水を生じます。
塩酸のポイント
項目 内容
溶質 HCl
水溶液の性質 強酸性
金属との反応 ZnやMgなどと反応してH₂を発生
塩基との反応 中和反応を起こす
含まれる陰イオン Cl⁻
例題:亜鉛に塩酸を加えると発生する気体は何か。
答え:水素 H₂
Zn + 2HCl → ZnCl₂ + H₂ の反応で水素が発生します。
確認ポイント
  • 塩酸が強酸であることを説明できる
  • 塩酸と金属の反応で水素が発生することを説明できる
  • 塩酸とNaOHの中和反応を書ける
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9 塩化物イオン Cl⁻

塩化物イオン Cl⁻ は、塩素原子が電子を1個受け取った陰イオンです。
塩化ナトリウム NaCl、塩化水素 HCl、塩化カルシウム CaCl₂ などに含まれます。
塩化物イオンは、銀イオン Ag⁺ と反応して塩化銀 AgCl の白色沈殿を生じます。
この性質を利用して、塩化物イオンの検出に硝酸銀 AgNO₃ 水溶液が使われます。
AgClはアンモニア水に溶けるため、銀の単元とも強くつながります。
塩化物イオンの検出
Ag⁺ + Cl⁻ → AgCl
白色沈殿の塩化銀が生じます。
塩化銀とアンモニア
AgCl + 2NH₃ → [Ag(NH₃)₂]⁺ + Cl⁻
ジアンミン銀(I)イオンをつくるため、AgClがアンモニア水に溶けます。
塩化物イオンの検出
項目 内容
検出したいイオン Cl⁻
使う試薬 AgNO₃水溶液
生じる沈殿 AgCl
沈殿の色 白色
アンモニア水 AgClは溶ける
例題:塩化物イオンCl⁻を検出するために使う代表的な金属イオンは何か。
答え:銀イオン Ag⁺
Ag⁺ + Cl⁻ → AgCl により、白色沈殿のAgClが生じます。
確認ポイント
  • 塩化物イオンがCl⁻であることを答えられる
  • AgClが白色沈殿であることを答えられる
  • AgClがアンモニア水に溶けることを説明できる
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10 代表的な塩化物

塩化物とは、塩化物イオン Cl⁻ を含む化合物です。
代表的な塩化物には、塩化ナトリウム NaCl、塩化カルシウム CaCl₂、塩化アンモニウム NH₄Cl、塩化銀 AgCl などがあります。
NaClは食塩の主成分として身近です。
CaCl₂は吸湿性があり、乾燥剤や凍結防止剤として利用されます。
NH₄Clはアンモニアと塩化水素が反応して生じる白煙としても登場します。
代表的な塩化物
化学式 名称 特徴
NaCl 塩化ナトリウム 食塩の主成分
CaCl₂ 塩化カルシウム 吸湿性。乾燥剤として使われる
NH₄Cl 塩化アンモニウム NH₃とHClで白煙として生じる
AgCl 塩化銀 白色沈殿。アンモニア水に溶ける
CuCl₂ 塩化銅(II) 銅化合物の一つ
確認ポイント
  • 代表的な塩化物の名称を答えられる
  • NaClが塩化ナトリウムであることを答えられる
  • CaCl₂が乾燥剤として使われることを説明できる
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11 次亜塩素酸ナトリウム NaClO

次亜塩素酸ナトリウム NaClO は、塩素系漂白剤や消毒剤に関係する物質です。
塩素を水酸化ナトリウム水溶液に吸収させると、NaClとNaClOを生じます。
NaClOは水中で次亜塩素酸 HClO と関係し、酸化作用によって漂白や殺菌に働きます。
ただし、塩素系漂白剤に酸性の薬品を混ぜると塩素ガスが発生する危険があります。
そのため、塩素系漂白剤は酸性洗剤などと混ぜてはいけません。
塩素と水酸化ナトリウム
Cl₂ + 2NaOH → NaCl + NaClO + H₂O
次亜塩素酸ナトリウムが生じます。漂白剤や消毒剤と関係します。
NaClOのポイント
項目 内容
化学式 NaClO
名称 次亜塩素酸ナトリウム
性質 酸化作用をもつ
用途 漂白剤、消毒剤
注意点 酸性洗剤などと混ぜると危険
注意:塩素系漂白剤と酸性洗剤を混ぜると、有毒な塩素ガスが発生する危険があります。
注意:家庭用品でも化学反応による危険があるため、表示を守って使う必要があります。
確認ポイント
  • NaClOが次亜塩素酸ナトリウムであることを答えられる
  • NaClOが漂白剤や消毒剤に関係することを説明できる
  • 塩素系漂白剤と酸性洗剤を混ぜてはいけない理由を理解している
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12 安全面での注意

塩素 Cl₂ は有毒な気体です。
黄緑色や刺激臭があっても、直接吸い込んではいけません。
塩化水素 HCl も刺激臭をもつ気体で、水に溶けると強酸である塩酸になります。
塩素系漂白剤と酸性洗剤を混ぜると、塩素ガスが発生する危険があります。
実験でも家庭でも、塩素系薬品は混合禁止の表示を必ず確認する必要があります。
塩素・塩化水素の注意点
物質 注意点
Cl₂ 黄緑色の有毒気体。吸い込まない
HCl 刺激臭をもつ気体。水に溶けると塩酸
塩酸 強酸。皮膚や目に触れないよう注意
NaClO 酸性薬品と混ぜると塩素発生の危険
AgNO₃ 塩化物検出に使うが、皮膚や衣服に付くと変色することがある
確認ポイント
  • 塩素が有毒であることを説明できる
  • 塩化水素や塩酸の危険性を説明できる
  • 塩素系漂白剤を酸性洗剤と混ぜてはいけないことを理解している
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13 テストでの出題パターン

塩素・塩化水素・塩化物では、塩素の製法、塩素水の反応、漂白作用、塩化水素と塩酸、塩化物イオンの検出がよく出題されます。
塩素の実験室的製法では、MnO₂ + 4HCl → MnCl₂ + Cl₂ + 2H₂O が重要です。
塩素水では、Cl₂ + H₂O ⇄ HCl + HClO によりHClOが生じ、漂白作用や殺菌作用に関係します。
塩化水素は水に非常によく溶け、その水溶液が塩酸です。
塩化物イオンの検出では、Ag⁺ + Cl⁻ → AgCl により白色沈殿が生じ、AgClはアンモニア水に溶けます。
例題:塩素の実験室的製法の反応式を書け。
答え:MnO₂ + 4HCl → MnCl₂ + Cl₂ + 2H₂O
二酸化マンガンに濃塩酸を加えて加熱すると塩素が発生します。
例題:塩素水の漂白作用に関係する物質は何か。
答え:次亜塩素酸 HClO
Cl₂ + H₂O ⇄ HCl + HClO によりHClOが生じ、酸化作用で漂白します。
例題:塩化水素が水に溶けた水溶液を何というか。
答え:塩酸
HClの水溶液が塩酸です。
例題:塩化物イオンCl⁻の検出で生じる白色沈殿は何か。
答え:塩化銀 AgCl
Ag⁺ + Cl⁻ → AgCl により、白色沈殿が生じます。
例題:AgClはアンモニア水に溶けるか。
答え:溶ける。
AgClはアンモニアと錯イオン [Ag(NH₃)₂]⁺ をつくるため、アンモニア水に溶けます。
確認ポイント
  • 塩素の製法を反応式で説明できる
  • 塩素水の反応とHClOの働きを説明できる
  • 塩化水素と塩酸を区別できる
  • 塩化物イオンの検出方法を説明できる
  • 塩素系薬品の安全上の注意を説明できる
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