無機化学 / complex_ion

錯イオン

金属イオンに配位子が結合してできる錯イオンについて、配位子・色・沈殿の溶解と関連づけてまとめた教材です。
難易度:標準 目安:30分
# 無機化学 # 錯イオン # 配位子 # アンモニア # 沈殿反応 # 金属イオン

この教材で学ぶこと

到達目標

  • 錯イオンとは何かを説明できる
  • 代表的な錯イオンの式と色を答えられる
  • 沈殿が過剰試薬で溶ける理由を錯イオンで説明できる
  • アンモニアや水酸化物イオンが配位子として働くことを理解できる

前提知識

  • 金属イオンの基本
  • 沈殿反応
  • アンモニアの性質
  • 両性水酸化物
目次

1 錯イオンとは

錯イオンとは、金属イオンに分子やイオンが結合してできる複雑なイオンです。
中心にある金属イオンを中心金属イオン、周りに結合する分子やイオンを配位子といいます。
高校化学では、アンモニア NH₃、水 H₂O、水酸化物イオン OH⁻、シアン化物イオン CN⁻ などが配位子として登場します。
錯イオンは、沈殿が過剰の試薬に溶ける理由や、金属イオン水溶液の色を理解するうえで重要です。
錯イオンのイメージ
[中心金属イオン(配位子)n]電荷
角かっこ [ ] の中に中心金属イオンと配位子を書き、全体の電荷を右上に書きます。
確認ポイント
  • 中心金属イオンと配位子を説明できる
  • 錯イオンが沈殿の溶解や色と関係することを理解できる
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2 代表的な配位子

配位子とは、中心金属イオンに結合する分子やイオンです。
配位子は非共有電子対をもち、それを金属イオンに与えることで結合します。
高校化学では、アンモニアや水酸化物イオンが特によく出題されます。
代表的な配位子
配位子 名称 電荷 ポイント
NH₃ アンモニア 0 Cu²⁺やAg⁺と錯イオンをつくる
H₂O 0 水溶液中の金属イオンの周囲に存在
OH⁻ 水酸化物イオン -1 Al(OH)₃やZn(OH)₂の溶解に関係
CN⁻ シアン化物イオン -1 安定な錯イオンをつくる
注意:高校化学では、配位子の詳しい結合様式よりも、どの金属イオンがどの配位子と錯イオンをつくるかが重要です。
確認ポイント
  • NH₃とOH⁻が代表的な配位子であることを覚える
  • 配位子が中心金属イオンに結合することを説明できる
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3 アンモニアが関係する錯イオン

アンモニア NH₃ は、金属イオンに配位して錯イオンをつくることがあります。
特に、銅(Ⅱ)イオン Cu²⁺ と銀イオン Ag⁺ の錯イオンは重要です。
Cu²⁺にアンモニア水を少量加えると青白色沈殿が生じ、さらに過剰に加えると深青色溶液になります。
この深青色は、テトラアンミン銅(Ⅱ)イオンによるものです。
テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン
[Cu(NH₃)₄]²⁺
深青色を示す代表的な錯イオンです。
ジアンミン銀(I)イオン
[Ag(NH₃)₂]⁺
AgClがアンモニア水に溶けるときに関係する錯イオンです。
アンモニア水と錯イオン
金属イオン 少量NH₃水 過剰NH₃水 できる錯イオン
Cu²⁺ 青白色沈殿 深青色溶液 [Cu(NH₃)₄]²⁺
Ag⁺ 沈殿を生じることがある 溶ける [Ag(NH₃)₂]⁺
Zn²⁺ 白色沈殿 溶けることがある アンミン錯イオン
Al³⁺ 白色沈殿 溶けにくい 高校範囲では溶けにくいと整理
確認ポイント
  • Cu²⁺に過剰NH₃水で深青色溶液になることを覚える
  • AgClがアンモニア水に溶ける理由を説明できる
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4 水酸化物イオンが関係する錯イオン

水酸化物イオン OH⁻ も配位子として働くことがあります。
Al(OH)₃やZn(OH)₂は白色沈殿ですが、過剰のNaOH水溶液を加えると溶けます。
これは、過剰のOH⁻と反応して錯イオンをつくるためです。
この性質は、両性水酸化物の重要な特徴です。
テトラヒドロキソアルミン酸イオン
[Al(OH)₄]⁻
Al(OH)₃が過剰NaOHに溶けるときに関係します。
テトラヒドロキソ亜鉛酸イオン
[Zn(OH)₄]²⁻
Zn(OH)₂が過剰NaOHに溶けるときに関係します。
Al(OH)₃の溶解
Al(OH)₃ + OH⁻ → [Al(OH)₄]⁻
過剰のOH⁻と反応して錯イオンをつくるため、沈殿が溶けます。
Zn(OH)₂の溶解
Zn(OH)₂ + 2OH⁻ → [Zn(OH)₄]²⁻
Zn(OH)₂も過剰OH⁻により錯イオンをつくって溶けます。
確認ポイント
  • Al(OH)₃とZn(OH)₂が過剰NaOHに溶ける理由を説明できる
  • OH⁻が配位子として働く場合があることを理解できる
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5 錯イオンと色

錯イオンは色と強く関係します。
同じ金属イオンでも、周囲に結合する配位子が変わると色が変化することがあります。
高校化学では、銅(Ⅱ)イオンの深青色錯イオンが特に重要です。
代表的な錯イオンと色
錯イオン ポイント
[Cu(NH₃)₄]²⁺ 深青色 Cu²⁺に過剰NH₃水
[Ag(NH₃)₂]⁺ 無色 AgClの溶解に関係
[Al(OH)₄]⁻ 無色 Al(OH)₃の溶解に関係
[Zn(OH)₄]²⁻ 無色 Zn(OH)₂の溶解に関係
注意:深青色という表現が出てきたら、[Cu(NH₃)₄]²⁺ を強く疑いましょう。
確認ポイント
  • 深青色の錯イオンとして[Cu(NH₃)₄]²⁺を答えられる
  • 錯イオンと沈殿の溶解を関連づけられる
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6 錯イオンの例題

錯イオンの問題は、沈殿反応や両性元素と組み合わせて出題されます。
少量の試薬で沈殿ができ、過剰に加えると溶ける場合は、錯イオン形成を考えましょう。
例題:Cu²⁺を含む水溶液にアンモニア水を過剰に加えると何色になるか。
答え:深青色
Cu²⁺は過剰のNH₃と錯イオン [Cu(NH₃)₄]²⁺ をつくり、深青色の溶液になります。
例題:AgClがアンモニア水に溶ける理由を答えなさい。
答え:Ag⁺がNH₃と錯イオン [Ag(NH₃)₂]⁺ をつくるから。
Ag⁺が錯イオンとして水溶液中に存在できるようになるため、AgClの沈殿が溶けます。
例題:Al(OH)₃が過剰NaOHに溶ける理由を答えなさい。
答え:OH⁻と反応して [Al(OH)₄]⁻ をつくるから。
Al(OH)₃は両性水酸化物であり、過剰OH⁻により錯イオンを形成して溶けます。
確認ポイント
  • 錯イオンの式を見て中心金属イオンと配位子を判断できる
  • 錯イオン形成による沈殿の溶解を説明できる
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