この教材で学ぶこと
到達目標
-
代表的な沈殿の色を答えられる
-
金属イオンと沈殿試薬の組み合わせを整理できる
-
水酸化物沈殿の色を覚えられる
-
硫化物沈殿の色を覚えられる
-
過剰なアンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液で再溶解する例を説明できる
-
金属イオンの識別問題に対応できる
前提知識
-
金属イオン
-
沈殿反応
-
錯イオン
-
両性元素
-
炎色反応
1
沈殿反応とは
沈殿反応とは、水溶液中のイオンどうしが反応して、水に溶けにくい固体を生じる反応です。
無機化学では、金属イオンに特定の陰イオンを加えて沈殿を作り、その色や性質から金属イオンを識別します。
沈殿の色、再溶解するかどうか、過剰試薬で錯イオンを作るかどうかが重要です。
特に、Ag⁺、Pb²⁺、Cu²⁺、Fe²⁺、Fe³⁺、Al³⁺、Zn²⁺、Ca²⁺、Ba²⁺ などはよく出ます。
沈殿反応で見るポイント
|
見るポイント
|
内容
|
|
沈殿ができるか
|
どのイオンと反応して沈殿するか
|
|
沈殿の色
|
白色、黒色、青白色、赤褐色など
|
|
過剰試薬で溶けるか
|
錯イオンや両性水酸化物を作るか
|
|
加熱や酸で変化するか
|
沈殿が溶ける・気体が出るなど
|
確認ポイント
-
沈殿反応が水に溶けにくい固体を生じる反応であることを説明できる
-
沈殿の色と再溶解性が識別に重要であることを理解できる
↑ 目次へ戻る
2
塩化物イオン Cl⁻ による沈殿
塩化物イオン Cl⁻ を加えると、Ag⁺やPb²⁺などが沈殿を作ります。
AgClは白色沈殿で、過剰のアンモニア水に溶けて錯イオンを作ります。
PbCl₂も白色沈殿ですが、熱水に溶けやすい性質があります。
塩化物沈殿は、銀イオンや鉛イオンの識別でよく出ます。
塩化銀の沈殿
Ag⁺ + Cl⁻ → AgCl
AgClは白色沈殿です。
塩化物沈殿
|
金属イオン
|
沈殿
|
色
|
特徴
|
|
Ag⁺
|
AgCl
|
白色
|
過剰NH₃水に溶ける
|
|
Pb²⁺
|
PbCl₂
|
白色
|
熱水に溶けやすい
|
確認ポイント
-
AgClが白色沈殿であることを覚える
-
AgClが過剰アンモニア水に溶けることを説明できる
-
PbCl₂が白色沈殿で熱水に溶けやすいことを覚える
↑ 目次へ戻る
3
硫酸イオン SO₄²⁻ による沈殿
硫酸イオン SO₄²⁻ を加えると、Ba²⁺やPb²⁺などが白色沈殿を作ります。
特にBaSO₄は水に非常に溶けにくい白色沈殿として重要です。
Ba²⁺の検出では、硫酸イオンを加えてBaSO₄の白色沈殿を確認することがあります。
PbSO₄も白色沈殿です。
硫酸バリウムの沈殿
Ba²⁺ + SO₄²⁻ → BaSO₄
BaSO₄は白色沈殿です。
硫酸塩沈殿
|
金属イオン
|
沈殿
|
色
|
特徴
|
|
Ba²⁺
|
BaSO₄
|
白色
|
非常に溶けにくい
|
|
Pb²⁺
|
PbSO₄
|
白色
|
鉛イオンの沈殿として出る
|
|
Ca²⁺
|
CaSO₄
|
白色
|
やや溶けにくい
|
確認ポイント
-
BaSO₄が白色沈殿であることを覚える
-
Ba²⁺の検出にSO₄²⁻が使われることを理解できる
↑ 目次へ戻る
4
水酸化物沈殿
金属イオンにOH⁻を加えると、水酸化物の沈殿ができることがあります。
水酸化物沈殿は、色で区別されることが多いです。
Fe(OH)₂は緑白色、Fe(OH)₃は赤褐色、Cu(OH)₂は青白色としてよく出ます。
Al(OH)₃やZn(OH)₂は白色沈殿で、両性水酸化物として過剰NaOHに溶けます。
代表的な水酸化物沈殿
|
金属イオン
|
沈殿
|
色
|
特徴
|
|
Fe²⁺
|
Fe(OH)₂
|
緑白色
|
空気中で酸化されやすい
|
|
Fe³⁺
|
Fe(OH)₃
|
赤褐色
|
鉄(III)イオンの確認で重要
|
|
Cu²⁺
|
Cu(OH)₂
|
青白色
|
加熱で黒色CuOになりやすい
|
|
Al³⁺
|
Al(OH)₃
|
白色
|
過剰NaOHに溶ける
|
|
Zn²⁺
|
Zn(OH)₂
|
白色
|
過剰NaOHにも過剰NH₃水にも溶ける
|
|
Mg²⁺
|
Mg(OH)₂
|
白色
|
水に溶けにくい
|
確認ポイント
-
Fe(OH)₂が緑白色であることを覚える
-
Fe(OH)₃が赤褐色であることを覚える
-
Cu(OH)₂が青白色であることを覚える
-
Al(OH)₃とZn(OH)₂が白色沈殿であることを覚える
↑ 目次へ戻る
5
両性水酸化物
両性水酸化物とは、酸にも強塩基にも溶ける水酸化物です。
代表例は Al(OH)₃、Zn(OH)₂、Pb(OH)₂、Sn(OH)₂ などです。
高校化学では、Al、Zn、Pb、Snを両性元素として覚えることが多いです。
これらの水酸化物は、少量のNaOHで白色沈殿を作り、過剰のNaOHで溶けることがあります。
沈殿が一度できてから過剰試薬で溶ける、という流れを押さえましょう。
両性水酸化物
|
金属イオン
|
沈殿
|
色
|
過剰NaOH
|
|
Al³⁺
|
Al(OH)₃
|
白色
|
溶ける
|
|
Zn²⁺
|
Zn(OH)₂
|
白色
|
溶ける
|
|
Pb²⁺
|
Pb(OH)₂
|
白色
|
溶ける
|
|
Sn²⁺
|
Sn(OH)₂
|
白色
|
溶ける
|
確認ポイント
-
Al、Zn、Pb、Snを両性元素として覚える
-
両性水酸化物が過剰NaOHに溶けることを説明できる
↑ 目次へ戻る
6
アンモニア水での沈殿と錯イオン
アンモニア水を加えると、OH⁻によって水酸化物沈殿を作る場合があります。
さらに過剰のアンモニア水を加えると、錯イオンを作って溶ける金属イオンがあります。
特にAg⁺、Cu²⁺、Zn²⁺は重要です。
AgClは過剰NH₃水に溶け、[Ag(NH₃)₂]⁺を作ります。
Cu²⁺は過剰NH₃水で深青色の[Cu(NH₃)₄]²⁺を作ります。
過剰アンモニア水での変化
|
金属イオン・沈殿
|
過剰NH₃水での変化
|
特徴
|
|
AgCl
|
溶ける
|
[Ag(NH₃)₂]⁺を作る
|
|
Cu²⁺
|
深青色溶液になる
|
[Cu(NH₃)₄]²⁺を作る
|
|
Zn(OH)₂
|
溶ける
|
アンミン錯イオンを作る
|
|
Al(OH)₃
|
基本的に過剰NH₃水には溶けにくい
|
Znとの区別で重要
|
確認ポイント
-
AgClが過剰NH₃水に溶けることを覚える
-
Cu²⁺が過剰NH₃水で深青色になることを覚える
-
Zn(OH)₂とAl(OH)₃の違いを説明できる
↑ 目次へ戻る
7
硫化物沈殿
硫化物イオン S²⁻ と金属イオンが反応すると、硫化物沈殿ができることがあります。
硫化物沈殿は黒色のものが多いです。
CuS、PbS、Ag₂S、FeSなどは黒色沈殿としてよく出ます。
一方、ZnSは白色、CdSは黄色として扱われます。
硫化物沈殿は、金属イオンの系統分離で重要です。
代表的な硫化物沈殿
|
金属イオン
|
沈殿
|
色
|
|
Cu²⁺
|
CuS
|
黒色
|
|
Pb²⁺
|
PbS
|
黒色
|
|
Ag⁺
|
Ag₂S
|
黒色
|
|
Fe²⁺
|
FeS
|
黒色
|
|
Zn²⁺
|
ZnS
|
白色
|
|
Cd²⁺
|
CdS
|
黄色
|
確認ポイント
-
硫化物沈殿には黒色が多いことを覚える
-
ZnSが白色、CdSが黄色であることを覚える
↑ 目次へ戻る
8
炎色反応の色
炎色反応は、金属元素を炎に入れたときに特有の色を示す反応です。
沈殿反応と同じく、金属元素の識別でよく使われます。
高校化学では、Li、Na、K、Ca、Sr、Ba、Cuの色を覚えることが重要です。
ナトリウムの黄色は特に強く、他の色を見えにくくすることがあります。
暗記では『リアカーなきK村、動力借るとするもくれない馬力』などの語呂合わせも使われます。
代表的な炎色反応
|
元素
|
炎色
|
|
Li
|
赤色
|
|
Na
|
黄色
|
|
K
|
淡紫色
|
|
Ca
|
橙赤色
|
|
Sr
|
紅色
|
|
Ba
|
黄緑色
|
|
Cu
|
青緑色
|
確認ポイント
-
代表的な炎色反応の色を答えられる
-
Naの黄色が強いことを理解できる
↑ 目次へ戻る
9
沈殿・色まとめ例題
沈殿と色の問題では、沈殿の色、過剰試薬で溶けるかどうか、錯イオンの色がよく問われます。
特に、AgCl、Fe(OH)₂、Fe(OH)₃、Cu(OH)₂、Al(OH)₃、Zn(OH)₂、BaSO₄は優先的に覚えましょう。
例題:Ag⁺にCl⁻を加えると生じる沈殿の化学式と色を答えなさい。
答え:AgCl、白色
AgClは白色沈殿で、過剰アンモニア水に溶けます。
例題:Fe³⁺にOH⁻を加えると生じる沈殿の色は何色か。
答え:赤褐色
Fe(OH)₃は赤褐色沈殿です。
例題:Cu²⁺に過剰のNH₃水を加えると何色の溶液になるか。
答え:深青色
[Cu(NH₃)₄]²⁺を生じるため、深青色になります。
例題:Ba²⁺にSO₄²⁻を加えると生じる沈殿の化学式と色を答えなさい。
答え:BaSO₄、白色
BaSO₄は水に非常に溶けにくい白色沈殿です。
確認ポイント
-
代表的な沈殿の色を答えられる
-
過剰試薬で再溶解する例を説明できる
-
無機イオンの識別問題に対応できる
↑ 目次へ戻る