理論化学 / complex_ion

錯体の基礎

金属イオンに配位子が結合してできる錯体・錯イオンについて、中心金属イオン、配位子、配位数、錯イオンの電荷、代表例をまとめた教材です。
難易度:標準 目安:50分
# 理論化学 # 無機化学 # 錯体 # 錯イオン # 中心金属イオン # 配位子 # 配位数

この教材で学ぶこと

到達目標

  • 錯体と錯イオンの意味を説明できる
  • 中心金属イオンと配位子を区別できる
  • 配位数の意味を理解できる
  • 代表的な配位子を答えられる
  • 錯イオン全体の電荷を考えられる
  • 代表的な錯イオンの色や名前を理解できる

前提知識

  • 配位結合
  • 金属イオン
  • イオンの電荷
  • アンモニア
  • 沈殿反応
目次

1 錯体とは

錯体とは、金属イオンや金属原子を中心として、そのまわりに分子やイオンが配位結合したものです。
中心にある金属イオンを中心金属イオンといいます。
中心金属イオンに結合する分子やイオンを配位子といいます。
錯体が全体として電荷をもつ場合、錯イオンと呼びます。
錯体は無機化学、分析化学、生化学、材料化学などで重要です。
錯体の基本形
中心金属イオン + 配位子 → 錯体・錯イオン
金属イオンに配位子が配位結合してできます。
確認ポイント
  • 錯体が中心金属イオンと配位子からなることを説明できる
  • 錯体と錯イオンの違いを理解できる
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2 中心金属イオン

中心金属イオンとは、錯体の中心にある金属イオンです。
中心金属イオンは、配位子から電子対を受け取ります。
遷移金属イオンは錯体を作りやすく、Cu²⁺、Ag⁺、Fe²⁺、Fe³⁺、Zn²⁺などがよく登場します。
中心金属イオンの種類によって、錯体の色や安定性、構造が変わります。
錯体では、中心金属イオンの電荷と配位子の電荷を合わせて、全体の電荷を考えます。
代表的な中心金属イオン
金属イオン 特徴・代表例
Cu²⁺ アンモニアと深青色の錯イオンを作る
Ag⁺ アンモニアと無色の錯イオンを作る
Fe²⁺ ヘキサシアニド鉄(II)酸イオンなどを作る
Fe³⁺ チオシアン酸イオンなどと有色錯体を作る
Zn²⁺ アンモニアなどと錯イオンを作る
確認ポイント
  • 中心金属イオンが電子対を受け取る側であることを説明できる
  • 代表的な中心金属イオンを答えられる
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3 配位子

配位子とは、中心金属イオンに孤立電子対を提供して配位結合する分子やイオンです。
配位子には、中性分子もあれば、陰イオンもあります。
代表的な配位子には、NH₃、H₂O、Cl⁻、CN⁻、OH⁻などがあります。
NH₃やH₂Oは中性の配位子ですが、Cl⁻やCN⁻は負の電荷をもつ配位子です。
配位子の種類によって、錯体の色や安定性が変わることがあります。
代表的な配位子
配位子 名称 電荷
NH₃ アンミン 0
H₂O アクア 0
Cl⁻ クロリド -1
CN⁻ シアニド -1
OH⁻ ヒドロキシド -1
確認ポイント
  • 配位子が電子対を与える側であることを説明できる
  • NH₃、H₂O、Cl⁻、CN⁻などの代表的な配位子を答えられる
  • 配位子には中性分子と陰イオンがあることを理解できる
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4 配位数

配位数とは、中心金属イオンに直接結合している配位原子の数です。
単純な配位子では、中心金属イオンに結合している配位子の数と同じになることが多いです。
たとえば、[Cu(NH₃)₄]²⁺ では、Cu²⁺に4個のNH₃が結合しているため、配位数は4です。
[Ag(NH₃)₂]⁺ では、Ag⁺に2個のNH₃が結合しているため、配位数は2です。
配位数によって、錯体の形も変わります。
配位数の考え方
配位数 = 中心金属イオンに直接結合する配位原子の数
単純な配位子では配位子の数と一致することが多いです。
配位数の例
錯イオン 中心金属イオン 配位子 配位数
[Ag(NH₃)₂]⁺ Ag⁺ NH₃が2個 2
[Cu(NH₃)₄]²⁺ Cu²⁺ NH₃が4個 4
[Fe(CN)₆]⁴⁻ Fe²⁺ CN⁻が6個 6
[Fe(CN)₆]³⁻ Fe³⁺ CN⁻が6個 6
確認ポイント
  • 配位数の意味を説明できる
  • 簡単な錯イオンの配位数を判断できる
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5 錯イオンの電荷

錯イオン全体の電荷は、中心金属イオンの電荷と配位子の電荷の合計で決まります。
中性配位子であるNH₃やH₂Oは、錯イオン全体の電荷を変えません。
陰イオン配位子であるCl⁻やCN⁻は、1個につき-1の電荷を加えます。
たとえば、[Cu(NH₃)₄]²⁺ では、NH₃は中性なので、全体の電荷はCu²⁺の+2のままです。
[Fe(CN)₆]⁴⁻ では、Fe²⁺と6個のCN⁻を合わせて、+2 + 6×(-1) = -4 になります。
錯イオンの電荷
全体の電荷 = 中心金属イオンの電荷 + 配位子の電荷の合計
中性配位子は電荷計算に影響しません。
例題:[Cu(NH₃)₄]²⁺ の全体の電荷が+2である理由を説明しなさい。
答え:Cu²⁺に中性配位子NH₃が4個結合しているため。
NH₃は電荷0なので、全体の電荷はCu²⁺の+2のままです。
例題:Fe²⁺にCN⁻が6個配位した錯イオンの電荷を求めなさい。
答え:-4
+2 + 6×(-1) = -4 なので、[Fe(CN)₆]⁴⁻ です。
確認ポイント
  • 錯イオン全体の電荷を計算できる
  • 中性配位子と陰イオン配位子の違いを電荷から説明できる
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6 代表的な錯イオン

無機化学では、代表的な錯イオンの色や生成反応がよく問われます。
Cu²⁺にNH₃が配位すると、深青色の [Cu(NH₃)₄]²⁺ ができます。
Ag⁺にNH₃が配位すると、[Ag(NH₃)₂]⁺ ができます。
Fe²⁺やFe³⁺は、CN⁻とヘキサシアニド鉄酸イオンを作ります。
錯イオンは、金属イオンの検出や沈殿の再溶解でも重要です。
代表的な錯イオン
錯イオン 名称の例 特徴
[Cu(NH₃)₄]²⁺ テトラアンミン銅(II)イオン 深青色
[Ag(NH₃)₂]⁺ ジアンミン銀(I)イオン AgClが過剰NH₃で溶けるときに関係
[Fe(CN)₆]⁴⁻ ヘキサシアニド鉄(II)酸イオン 鉄の錯イオン
[Fe(CN)₆]³⁻ ヘキサシアニド鉄(III)酸イオン 鉄の錯イオン
確認ポイント
  • 代表的な錯イオンをいくつか答えられる
  • [Cu(NH₃)₄]²⁺が深青色であることを覚える
  • 錯イオンが金属イオンの検出に関係することを理解できる
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7 錯体の形

錯体の形は、配位数や中心金属イオンの性質によって変わります。
配位数2では直線形、配位数4では正方形型や正四面体型、配位数6では正八面体型がよく登場します。
高校化学では、まず配位数と代表的な形の対応を大まかに押さえるとよいです。
大学化学では、配位子場理論や結晶場理論によって、錯体の色や磁性も詳しく説明されます。
配位数と錯体の形
配位数 代表的な形
2 直線形 [Ag(NH₃)₂]⁺
4 正方形型または正四面体型 [Cu(NH₃)₄]²⁺など
6 正八面体型 [Fe(CN)₆]⁴⁻など
注意:配位数4の錯体は、金属イオンや配位子によって正方形型や正四面体型をとることがあります。
注意:錯体の形は大学化学でより詳しく扱われます。
確認ポイント
  • 配位数と錯体の形の大まかな対応を説明できる
  • 配位数6で正八面体型がよく出ることを理解できる
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8 錯体と色

錯体には、鮮やかな色をもつものが多くあります。
遷移金属イオンを含む錯体では、d軌道の電子状態が光の吸収に関係します。
そのため、中心金属イオンや配位子が変わると、錯体の色も変わることがあります。
たとえば、Cu²⁺にアンモニアを加えると、深青色の錯イオンが生じます。
このような色の変化は、金属イオンの検出にも利用されます。
錯体の色の例
錯体・イオン 色の例
[Cu(NH₃)₄]²⁺ 深青色
[Fe(SCN)]²⁺ 血赤色
[Ni(NH₃)₆]²⁺ 青紫色系として扱われることがある
[Ag(NH₃)₂]⁺ 無色
確認ポイント
  • 錯体に色をもつものが多いことを説明できる
  • 中心金属イオンや配位子によって色が変わることを理解できる
  • 錯体の色が金属イオンの検出に使われることを説明できる
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9 錯体の基礎の例題

錯体の問題では、中心金属イオン、配位子、配位数、錯イオンの電荷、代表的な色がよく問われます。
まずは、錯イオンの式を見て、金属イオンと配位子を分ける練習をしましょう。
例題:[Cu(NH₃)₄]²⁺ の中心金属イオンは何か。
答え:Cu²⁺
錯イオンの中心にある金属イオンはCu²⁺です。NH₃は中性配位子です。
例題:[Cu(NH₃)₄]²⁺ の配位子は何か。
答え:NH₃
NH₃がCu²⁺に孤立電子対を提供して配位しています。
例題:[Ag(NH₃)₂]⁺ の配位数はいくつか。
答え:2
Ag⁺にNH₃が2個配位しているため、配位数は2です。
例題:[Fe(CN)₆]⁴⁻ において、Feの酸化数はいくつか。
答え:+2
CN⁻が6個で合計-6、錯イオン全体が-4なので、Feは+2です。
例題:[Cu(NH₃)₄]²⁺ の色としてよく扱われるものは何か。
答え:深青色
Cu²⁺に過剰のNH₃を加えると、深青色の錯イオンが生じます。
確認ポイント
  • 錯イオンの式から中心金属イオンと配位子を判断できる
  • 配位数を判断できる
  • 錯イオンの電荷や中心金属の酸化数を考えられる
  • 代表的な錯イオンの色を覚えられる
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