この教材で学ぶこと
到達目標
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結晶場理論が錯体の性質を説明する考え方であることを理解できる
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配位子が中心金属イオンのd軌道に影響を与えることを説明できる
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d軌道の分裂の基本イメージを理解できる
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強い配位子と弱い配位子の違いを大まかに説明できる
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錯体の色や磁性がd軌道の電子配置と関係することを理解できる
1
結晶場理論とは
結晶場理論とは、錯体中で配位子が中心金属イオンのd軌道に影響を与えることで、錯体の色や磁性を説明する考え方です。
遷移金属イオンでは、d軌道の電子が錯体の性質に大きく関係します。
中心金属イオンのまわりに配位子が近づくと、配位子の電子対や負電荷の影響で、d軌道のエネルギーが変化します。
その結果、もともと同じようなエネルギーだったd軌道が、いくつかのエネルギー準位に分かれます。
このd軌道のエネルギーの分かれ方が、錯体の色や不対電子の数に関係します。
確認ポイント
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結晶場理論が錯体の色や磁性を説明する入口であることを説明できる
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配位子が中心金属イオンのd軌道に影響することを理解できる
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2
d軌道と遷移金属
遷移金属では、d軌道に電子が入ることが重要です。
d軌道は5つあり、それぞれ最大2個ずつ電子が入るため、d軌道全体では最大10個の電子が入ります。
鉄、銅、クロム、ニッケル、コバルトなどの遷移金属イオンでは、d軌道の電子配置が錯体の色や磁性に関係します。
錯体を作ると、配位子の影響でd軌道のエネルギーが分裂します。
その分裂したd軌道に電子がどのように入るかが、錯体の性質を決める重要な要素になります。
d軌道の基本
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項目
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内容
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軌道の数
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5つ
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最大電子数
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10個
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関係する元素
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遷移金属元素
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錯体で重要な点
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d軌道の分裂と電子配置
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確認ポイント
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d軌道が5つあることを説明できる
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d軌道の電子が遷移金属錯体の性質に関係することを理解できる
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3
d軌道の分裂
孤立した金属イオンでは、5つのd軌道は同じようなエネルギーをもつと考えます。
しかし、配位子が金属イオンのまわりに近づくと、d軌道と配位子の電子対の反発のしかたが軌道ごとに変わります。
そのため、あるd軌道はエネルギーが高くなり、別のd軌道は比較的低いエネルギーになります。
このように、d軌道のエネルギーが分かれることを結晶場分裂といいます。
結晶場分裂の大きさは、中心金属イオンや配位子の種類、錯体の形によって変わります。
確認ポイント
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結晶場分裂の意味を説明できる
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配位子の影響でd軌道のエネルギーが変わることを理解できる
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4
正八面体錯体での分裂
配位数6の錯体では、正八面体型の構造をとるものが多くあります。
正八面体錯体では、6個の配位子が中心金属イオンを取り囲むように配置されます。
このとき、d軌道は低エネルギー側の3つの軌道と、高エネルギー側の2つの軌道に分かれると考えます。
低エネルギー側を t2g、高エネルギー側を eg と呼ぶことがあります。
高校範囲では名前を深く覚えるより、『d軌道が2つのグループに分かれる』というイメージを押さえることが大切です。
正八面体錯体のd軌道分裂
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グループ
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軌道の数
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エネルギー
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t2g
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3つ
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低い
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eg
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2つ
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高い
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注意:t2gやegという記号は大学化学でよく使います。
注意:まずは、正八面体錯体ではd軌道が3つと2つに分かれると理解しましょう。
確認ポイント
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正八面体錯体でd軌道が2つのグループに分かれることを説明できる
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低エネルギー側が3つ、高エネルギー側が2つであることを理解できる
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5
結晶場分裂の大きさ
d軌道の分裂の大きさを、結晶場分裂エネルギーと呼ぶことがあります。
分裂が大きい場合、低いエネルギーの軌道に電子がペアを作って入りやすくなります。
分裂が小さい場合、電子はなるべく別々の軌道に入り、不対電子が多くなりやすいです。
結晶場分裂の大きさは、配位子の種類によって大きく変わります。
この違いが、錯体の色や磁性の違いにつながります。
結晶場分裂の大きさと電子配置
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分裂の大きさ
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電子の入り方
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不対電子
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大きい
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低エネルギー軌道でペアを作りやすい
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少なくなりやすい
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小さい
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別々の軌道に入りやすい
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多くなりやすい
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確認ポイント
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結晶場分裂の大きさが電子の入り方に影響することを説明できる
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不対電子の数が分裂の大きさと関係することを理解できる
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6
強い配位子と弱い配位子
配位子には、d軌道の分裂を大きくしやすいものと、小さくしやすいものがあります。
分裂を大きくしやすい配位子を強い配位子、分裂を小さくしやすい配位子を弱い配位子と考えます。
一般に、CN⁻やCOは強い配位子として扱われます。
一方、I⁻やBr⁻などは弱い配位子として扱われることが多いです。
NH₃やH₂Oはその中間的な例としてよく登場します。
配位子の強さによって、錯体の色や磁性が変わることがあります。
配位子の強さの大まかな例
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分類
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配位子の例
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特徴
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強い配位子
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CN⁻, CO
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結晶場分裂を大きくしやすい
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中程度
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NH₃, H₂O
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錯体でよく登場する
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弱い配位子
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Cl⁻, Br⁻, I⁻
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結晶場分裂を小さくしやすい
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確認ポイント
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強い配位子と弱い配位子の違いを説明できる
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配位子の種類が結晶場分裂に影響することを理解できる
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7
高スピンと低スピン
錯体では、不対電子が多い電子配置を高スピン、少ない電子配置を低スピンと呼ぶことがあります。
結晶場分裂が小さい場合、電子はできるだけ別々の軌道に入り、不対電子が多くなりやすいです。
このような場合、高スピン錯体になりやすいです。
結晶場分裂が大きい場合、電子は低エネルギー側の軌道でペアを作りやすく、不対電子が少なくなります。
このような場合、低スピン錯体になりやすいです。
高スピン・低スピンの違いは、錯体の磁性と関係します。
高スピンと低スピン
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種類
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結晶場分裂
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不対電子
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起こりやすい条件
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高スピン
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小さい
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多い
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弱い配位子
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低スピン
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大きい
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少ない
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強い配位子
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確認ポイント
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高スピンと低スピンの違いを説明できる
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不対電子の数が磁性に関係することを理解できる
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8
結晶場理論の例題
結晶場理論の入口では、難しい計算よりも、配位子がd軌道を分裂させること、不対電子の数が変わることを押さえましょう。
錯体の色や磁性は、このd軌道分裂と電子配置によって説明されます。
例題:結晶場理論では、配位子が中心金属イオンの何軌道に影響すると考えるか。
答え:d軌道
配位子の影響により、中心金属イオンのd軌道のエネルギーが分裂します。
例題:d軌道のエネルギーが配位子の影響で分かれることを何というか。
答え:結晶場分裂
錯体中では、配位子の配置によってd軌道のエネルギーが分裂します。
例題:結晶場分裂が大きいと、不対電子は多くなりやすいか少なくなりやすいか。
答え:少なくなりやすい
低エネルギー側の軌道で電子がペアを作りやすくなるためです。
例題:高スピン錯体は、不対電子が多いか少ないか。
答え:多い
高スピン錯体では、電子が別々の軌道に入りやすく、不対電子が多くなります。
確認ポイント
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結晶場分裂の意味を説明できる
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強い配位子・弱い配位子の違いを理解できる
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高スピン・低スピンの入口を説明できる
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