理論化学 / electrolysis

電気分解

外部から電気エネルギーを加えて酸化還元反応を起こす電気分解について、陽極・陰極、反応の判断、電気量と生成量の関係をまとめた教材です。
難易度:標準 目安:45分
# 理論化学 # 電気分解 # 陽極 # 陰極 # 酸化還元 # ファラデーの法則 # 電気量

この教材で学ぶこと

到達目標

  • 電気分解が外部電源を使って酸化還元反応を起こす操作であることを説明できる
  • 陽極で酸化、陰極で還元が起こることを理解できる
  • 電池と電気分解の違いを説明できる
  • 水溶液の電気分解で発生する物質を判断できる
  • 電気量と電子の物質量の関係を理解できる

前提知識

  • 酸化還元反応
  • 電池
  • イオン
  • 半反応式
  • 物質量 mol
目次

1 電気分解とは

電気分解とは、外部から電気エネルギーを加えて、通常は進みにくい酸化還元反応を起こす操作です。
電池は化学反応から電気エネルギーを取り出す装置です。
一方、電気分解は電気エネルギーを使って化学反応を起こします。
つまり、電池と電気分解はエネルギー変換の向きが逆です。
電池と電気分解の違い
項目 電池 電気分解
エネルギー変換 化学エネルギー → 電気エネルギー 電気エネルギー → 化学エネルギー
反応 自発的な酸化還元反応 外部電源で起こす酸化還元反応
目的 電気を取り出す 物質を生成・分解する
確認ポイント
  • 電気分解が外部電源を使う操作であることを説明できる
  • 電池と電気分解の違いをエネルギー変換で説明できる
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2 陽極と陰極

電気分解では、外部電源の正極につながれた電極を陽極、負極につながれた電極を陰極といいます。
陽極では酸化が起こります。
陰極では還元が起こります。
これは電池の正極・負極と混乱しやすいので、電気分解では『陽極で酸化、陰極で還元』と覚えるとよいです。
電気分解の基本
陽極で酸化、陰極で還元
電気分解の反応判断で最も重要です。
電気分解の陽極・陰極
電極 外部電源との接続 起こる反応
陽極 電源の正極につながる 酸化
陰極 電源の負極につながる 還元
確認ポイント
  • 電気分解では陽極で酸化が起こることを覚える
  • 電気分解では陰極で還元が起こることを覚える
  • 陽極・陰極と外部電源の接続を説明できる
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3 水の電気分解

水は少量の電解質を加えることで電気分解できます。
水の電気分解では、陰極で水素、陽極で酸素が発生します。
発生する気体の体積比は、水素 : 酸素 = 2 : 1 です。
これは水の化学式 H₂O と反応式から理解できます。
水の電気分解の全体反応
2H₂O → 2H₂ + O₂
水素と酸素が2:1の体積比で発生します。
水の電気分解
電極 発生する物質 反応
陰極 H₂ 還元
陽極 O₂ 酸化
確認ポイント
  • 水の電気分解で陰極にH₂が発生することを覚える
  • 水の電気分解で陽極にO₂が発生することを覚える
  • H₂とO₂の体積比が2:1であることを説明できる
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4 塩化銅(II)水溶液の電気分解

塩化銅(II)水溶液 CuCl₂(aq) を電気分解すると、陰極では Cu²⁺ が電子を受け取って銅 Cu になります。
陽極では Cl⁻ が電子を失って塩素 Cl₂ になります。
このように、陰極では陽イオンが還元され、陽極では陰イオンが酸化されることがあります。
ただし、水溶液では水が反応する場合もあるため、必ずしも溶質イオンだけが反応するとは限りません。
陰極の反応
Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu
銅(II)イオンが還元され、銅が析出します。
陽極の反応
2Cl⁻ → Cl₂ + 2e⁻
塩化物イオンが酸化され、塩素が発生します。
CuCl₂水溶液の電気分解
電極 反応 生成物
陰極 Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu
陽極 2Cl⁻ → Cl₂ + 2e⁻ 塩素
確認ポイント
  • CuCl₂水溶液の陰極で銅が析出することを説明できる
  • CuCl₂水溶液の陽極で塩素が発生することを説明できる
  • 陰極で還元、陽極で酸化が起こることを確認できる
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5 塩化ナトリウム水溶液の電気分解

塩化ナトリウム水溶液を電気分解すると、条件によって反応が変わります。
濃い食塩水では、陽極で塩素 Cl₂ が発生しやすいです。
陰極では Na⁺ ではなく、水が還元されて水素 H₂ が発生します。
水溶液中では、Na⁺は非常に還元されにくいため、水が代わりに反応します。
この反応は、工業的に塩素、水素、水酸化ナトリウムを得る方法にも関係します。
陰極の反応
2H₂O + 2e⁻ → H₂ + 2OH⁻
水が還元されて水素が発生します。
陽極の反応
2Cl⁻ → Cl₂ + 2e⁻
塩化物イオンが酸化されて塩素が発生します。
濃い食塩水の電気分解
電極 主な生成物 ポイント
陰極 H₂ 水が還元される
陽極 Cl₂ Cl⁻が酸化される
水溶液中 NaOHが残る OH⁻とNa⁺により塩基性になる
確認ポイント
  • 食塩水の電気分解で陰極に水素が発生することを理解できる
  • 食塩水の電気分解で陽極に塩素が発生することを理解できる
  • Na⁺ではなく水が還元される理由を大まかに説明できる
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6 融解塩の電気分解

融解塩とは、イオン結晶を加熱して液体にしたものです。
水溶液とは異なり、融解塩には水が存在しません。
そのため、陽イオンや陰イオンそのものが電極で反応します。
たとえば、融解NaClを電気分解すると、陰極でNa、陽極でCl₂が生成します。
融解NaClの陰極反応
Na⁺ + e⁻ → Na
Na⁺が還元され、金属ナトリウムができます。
融解NaClの陽極反応
2Cl⁻ → Cl₂ + 2e⁻
Cl⁻が酸化され、塩素が発生します。
水溶液と融解塩の違い
種類 水の有無 反応の特徴
水溶液 水がある 水が反応する場合がある
融解塩 水がない イオンそのものが反応しやすい
確認ポイント
  • 融解塩には水が存在しないことを説明できる
  • 融解NaClの電気分解でNaとCl₂が生じることを理解できる
  • 水溶液と融解塩の違いを説明できる
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7 電気量と電子の物質量

電気分解では、流した電気量と反応する電子の物質量に関係があります。
電子1 molがもつ電気量をファラデー定数といい、約 9.65×10⁴ C/mol です。
電気量 Q は、電流 I と時間 t の積で求められます。
電気量から電子のmolを求め、半反応式の係数を使うことで生成物の量を求められます。
電気量
Q = I t
Qは電気量C、Iは電流A、tは時間sです。
ファラデー定数
電子 1 mol = 9.65×10⁴ C
電気分解の量的関係で使います。
電子の物質量
電子のmol = Q ÷ 9.65×10⁴
流した電気量から電子の物質量を求めます。
確認ポイント
  • Q = It を使える
  • 電子1 molの電気量が約9.65×10⁴ Cであることを知る
  • 電気量から電子のmolを求められる
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8 電気分解の量的関係

電気分解で生成する物質の量は、流れた電子の物質量と半反応式から求められます。
たとえば、Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu では、Cu 1 molを析出させるのに電子2 molが必要です。
Ag⁺ + e⁻ → Ag では、Ag 1 molを析出させるのに電子1 molが必要です。
半反応式の電子の係数を見ることがポイントです。
半反応式と必要な電子
反応 生成物1 molに必要な電子
Ag⁺ + e⁻ → Ag 1 mol
Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu 2 mol
2H⁺ + 2e⁻ → H₂ 2 mol
2Cl⁻ → Cl₂ + 2e⁻ 2 molの電子が放出
例題:Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu において、Cu 0.50 molを析出させるには電子は何 mol必要か。
答え:1.0 mol
Cu 1 molに電子2 molが必要なので、Cu 0.50 molには電子1.0 molが必要です。
確認ポイント
  • 半反応式から必要な電子のmolを判断できる
  • 電子のmolと生成物のmolを対応させられる
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9 電気分解の例題

電気分解の問題では、陽極・陰極、酸化・還元、生成物、電気量の関係がよく問われます。
まず電極で何が起こるかを判断し、量的関係では電子のmolを中心に考えましょう。
例題:電気分解では酸化が起こるのは陽極か陰極か。
答え:陽極
電気分解では、陽極で酸化、陰極で還元が起こります。
例題:CuCl₂水溶液の電気分解で、陰極に析出する物質は何か。
答え:銅 Cu
陰極では Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu の還元反応が起こります。
例題:水の電気分解で、発生するH₂とO₂の体積比は何対何か。
答え:H₂ : O₂ = 2 : 1
全体反応は 2H₂O → 2H₂ + O₂ です。
例題:5.0 Aの電流を100秒流したときの電気量は何Cか。
答え:500 C
Q = It = 5.0×100 = 500 C です。
確認ポイント
  • 陽極・陰極で起こる反応を判断できる
  • 代表的な電気分解の生成物を答えられる
  • Q = It を使って電気量を求められる
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