理論化学 / entropy_gibbs_energy

エントロピーとギブズエネルギー

反応が自然に進む向きを考えるために重要なエントロピー、ギブズエネルギー、ΔG = ΔH - TΔS をまとめた教材です。
難易度:発展 目安:55分
# 理論化学 # 物理化学 # エントロピー # ギブズエネルギー # 自発変化 # ΔG # ΔS

この教材で学ぶこと

到達目標

  • エントロピーの意味を大まかに説明できる
  • 乱雑さ・状態数とエントロピーを関連づけられる
  • ギブズエネルギーの意味を理解できる
  • ΔGの符号から反応の自発性を判断できる
  • ΔG = ΔH - TΔS の意味を説明できる
  • 温度が反応の進みやすさに影響することを理解できる

前提知識

  • 熱力学の基礎
  • エンタルピー
  • 発熱反応・吸熱反応
  • 温度 K
  • 状態変化
目次

1 反応はなぜ進むのか

化学反応や状態変化が自然に進むかどうかは、熱を出すかどうかだけでは決まりません。
発熱反応は進みやすいことが多いですが、吸熱変化でも自然に進むものがあります。
たとえば、氷が室温で溶ける変化は吸熱ですが、自然に進みます。
このような変化を考えるには、エンタルピーだけでなく、エントロピーも考える必要があります。
反応の進みやすさを総合的に判断する量として、ギブズエネルギーが登場します。
反応の進みやすさ
エンタルピーの効果 + エントロピーの効果 → ギブズエネルギー
発熱か吸熱かだけでは、自発性は完全には判断できません。
確認ポイント
  • 反応の自発性がエンタルピーだけでは決まらないことを説明できる
  • エントロピーとギブズエネルギーが必要になる理由を理解できる
↑ 目次へ戻る

2 エントロピー S

エントロピー S は、系の乱雑さや、粒子の配置の可能性の多さを表す量として理解できます。
粒子が規則正しく並んでいる状態より、自由に動き回れる状態の方がエントロピーは大きくなりやすいです。
一般に、固体より液体、液体より気体の方がエントロピーは大きい傾向があります。
これは、気体の方が粒子の動ける範囲や配置の仕方が多いからです。
エントロピー変化は ΔS で表します。
エントロピー変化
ΔS = S(終状態) - S(始状態)
エントロピーも状態量なので、始状態と終状態で変化量が決まります。
状態とエントロピー
状態 粒子の自由度 エントロピー
固体 小さい 小さい
液体 中程度 中程度
気体 大きい 大きい
確認ポイント
  • エントロピーが乱雑さや状態数に関係する量であることを説明できる
  • 固体より液体、液体より気体の方がエントロピーが大きくなりやすいことを理解できる
↑ 目次へ戻る

3 エントロピーが増加する変化

エントロピーは、粒子がより自由に動ける方向で増加しやすいです。
固体が液体になる融解、液体が気体になる蒸発では、エントロピーは増加します。
気体分子の数が増える反応でも、エントロピーは増加しやすいです。
また、物質が混ざる変化でも、粒子の配置の可能性が増えるためエントロピーが増加します。
エントロピーの増減を考えるときは、粒子の自由度や気体分子数に注目すると判断しやすいです。
エントロピーが増加しやすい変化
変化 理由
固体 → 液体 粒子が動きやすくなる
液体 → 気体 粒子が大きく広がる
気体分子数が増える反応 配置の可能性が増える
混合 粒子の並び方が増える
例題:氷が水になるとき、エントロピーは増加するか減少するか。
答え:増加する
固体より液体の方が粒子が動きやすく、配置の可能性が増えるためです。
例題:水が水蒸気になるとき、エントロピーは増加するか減少するか。
答え:増加する
気体になると粒子が広い空間を自由に動けるため、エントロピーは大きくなります。
確認ポイント
  • 融解や蒸発でエントロピーが増加することを説明できる
  • 気体分子数の増加とエントロピー増加を関連づけられる
↑ 目次へ戻る

4 熱力学第二法則

熱力学第二法則は、自然に起こる変化の向きを考えるうえで重要です。
孤立系では、自然に起こる変化においてエントロピーは増加する方向へ進みます。
つまり、全体としてより起こりやすい状態、より配置の可能性が多い状態へ向かう傾向があります。
ただし、化学反応では系だけでなく外界のエントロピーも関係します。
そのため、実際には系と外界を合わせた全体のエントロピー変化を考える必要があります。
熱力学第二法則のイメージ
孤立系では、自然変化で全体のエントロピーが増加する
自然に進む向きは、全体のエントロピー増加と関係します。
確認ポイント
  • 熱力学第二法則の大まかな意味を説明できる
  • 自然変化とエントロピー増加を関連づけられる
↑ 目次へ戻る

5 ギブズエネルギー G

ギブズエネルギー G は、一定温度・一定圧力の条件で、反応や変化が自然に進むかどうかを判断するために使われる状態量です。
化学反応は大気圧下など、圧力一定の条件で扱うことが多いため、ギブズエネルギーは非常に重要です。
ギブズエネルギー変化は ΔG で表します。
ΔG が負なら、その変化は自発的に進みやすいです。
ΔG が正なら、その向きには自発的に進みにくいです。
ΔG が0なら、平衡状態にあると考えます。
ΔGの符号と自発性
ΔG 変化の進みやすさ 状態
ΔG < 0 自発的に進みやすい 反応が進む向き
ΔG = 0 正味の変化なし 平衡
ΔG > 0 自発的に進みにくい 逆向きが進みやすい
確認ポイント
  • ギブズエネルギーが自発性の判断に使われることを説明できる
  • ΔGの符号から反応の進みやすさを判断できる
↑ 目次へ戻る

6 ΔG = ΔH - TΔS

ギブズエネルギー変化は、エンタルピー変化とエントロピー変化から考えることができます。
基本式は ΔG = ΔH - TΔS です。
ΔH は熱の出入りに関係し、ΔS は乱雑さや状態数の変化に関係します。
T は絶対温度で、単位は K です。
この式から、反応の進みやすさは、エンタルピーの効果とエントロピーの効果のバランスで決まることが分かります。
ギブズエネルギー変化
ΔG = ΔH - TΔS
一定温度・一定圧力での自発性を判断する基本式です。
式に出てくる量
記号 意味 単位の例
ΔG ギブズエネルギー変化 kJ/mol
ΔH エンタルピー変化 kJ/mol
T 絶対温度 K
ΔS エントロピー変化 J/(mol・K) または kJ/(mol・K)
注意:計算では、ΔHとTΔSの単位をそろえる必要があります。
注意:ΔSがJ単位で与えられているときは、kJに直すことがあります。
確認ポイント
  • ΔG = ΔH - TΔS の式を覚える
  • ΔH、T、ΔSの意味を説明できる
  • 温度はKで扱うことを理解できる
↑ 目次へ戻る

7 エンタルピー支配とエントロピー支配

ΔG = ΔH - TΔS から、反応の進みやすさにはΔHとΔSの両方が関係することが分かります。
発熱反応ではΔHが負になり、ΔGを小さくする方向にはたらきます。
エントロピーが増加する変化ではΔSが正になり、-TΔSが負になるため、ΔGを小さくします。
つまり、発熱であることも、エントロピーが増加することも、反応を自発的に進みやすくする要因です。
温度が高いほど、TΔSの影響が大きくなります。
ΔHとΔSの影響
条件 ΔGへの影響 自発性への影響
ΔH < 0 ΔGを小さくする 進みやすくする
ΔH > 0 ΔGを大きくする 進みにくくする
ΔS > 0 -TΔSが負 進みやすくする
ΔS < 0 -TΔSが正 進みにくくする
確認ポイント
  • 発熱反応がΔGを小さくしやすいことを説明できる
  • エントロピー増加がΔGを小さくしやすいことを理解できる
  • 温度がTΔSの影響を変えることを説明できる
↑ 目次へ戻る

8 温度による自発性の変化

ΔG = ΔH - TΔS では、温度 T がエントロピー項 TΔS にかかっています。
そのため、温度が変わると、反応が自発的に進むかどうかが変わる場合があります。
ΔHが正でΔSも正の反応では、低温では進みにくくても、高温ではTΔSが大きくなり進みやすくなることがあります。
一方、ΔHが負でΔSが負の反応では、低温では進みやすくても、高温では進みにくくなることがあります。
融解や蒸発などの状態変化は、温度によって進みやすさが変わる身近な例です。
ΔHとΔSの符号による自発性
ΔH ΔS 自発性の傾向
常に自発的に進みやすい
常に自発的に進みにくい
高温で進みやすい
低温で進みやすい
確認ポイント
  • 温度によってΔGの符号が変わる場合があることを説明できる
  • ΔHとΔSの符号から自発性の傾向を判断できる
↑ 目次へ戻る

9 平衡とΔG

ギブズエネルギーは、化学平衡とも関係します。
反応が進むにつれて、反応の進む力は変化します。
最終的に、正反応と逆反応がつり合った平衡状態では、ΔG = 0 になります。
このとき、反応が完全に止まっているわけではありません。
正反応と逆反応が同じ速さで進んでいるため、見かけ上は変化がないように見えます。
つまり、ΔG = 0 は平衡状態の目印になります。
平衡条件
ΔG = 0
平衡状態では、正味の変化を進める自由エネルギー差がありません。
確認ポイント
  • 平衡状態ではΔGが0であることを説明できる
  • ΔGと化学平衡を関連づけられる
↑ 目次へ戻る

10 状態変化とΔG

状態変化でも、ギブズエネルギーを使って進みやすさを考えられます。
たとえば、氷が水になる融解では、低温では氷の方が安定で、高温では水の方が安定です。
融点では、固体と液体が平衡にあるため、融解のΔGは0になります。
沸点でも、液体と気体が平衡にあるため、蒸発のΔGは0になります。
このように、相変化の温度では、2つの状態のギブズエネルギーが等しいと考えられます。
状態変化とΔG
状態変化 平衡となる温度 そのときのΔG
融解 融点 0
蒸発 沸点 0
昇華 昇華点 0
確認ポイント
  • 融点や沸点でΔGが0になることを理解できる
  • 状態変化とギブズエネルギーを関連づけられる
↑ 目次へ戻る

11 エントロピーとギブズエネルギーの例題

エントロピーとギブズエネルギーでは、ΔSの増減、ΔGの符号、ΔG = ΔH - TΔS の意味がよく問われます。
計算問題に入る前に、符号と意味を確実に理解しておくことが大切です。
例題:固体が液体になるとき、エントロピーは増加しやすいか減少しやすいか。
答え:増加しやすい
液体では固体より粒子が自由に動けるため、エントロピーは増加しやすいです。
例題:ΔG < 0 のとき、その変化は自発的に進みやすいか。
答え:進みやすい
一定温度・一定圧力で、ΔGが負ならその向きに自発的に進みやすいです。
例題:ΔG = 0 はどのような状態を表すか。
答え:平衡状態
正味の変化を進めるギブズエネルギー差がない状態です。
例題:ギブズエネルギー変化の式を書きなさい。
答え:ΔG = ΔH - TΔS
エンタルピー変化とエントロピー変化から、自発性を判断する式です。
例題:ΔH > 0、ΔS > 0 の反応は、高温と低温のどちらで進みやすくなるか。
答え:高温
高温ではTΔSが大きくなり、ΔG = ΔH - TΔS が負になりやすいためです。
確認ポイント
  • エントロピーの増減を判断できる
  • ΔGの符号から自発性を判断できる
  • ΔG = ΔH - TΔS を使って温度の影響を説明できる
↑ 目次へ戻る

関連する化学図鑑

この内容の問題へ 問題へ 教材一覧へ ホームへ
ホーム