理論化学 / resonance

共鳴

複数のルイス構造で表される分子やイオンにおいて、実際の構造がそれらの平均的な構造として表される共鳴についてまとめた教材です。
難易度:発展 目安:50分
# 理論化学 # 共鳴 # ルイス構造 # 共鳴構造 # 電子の非局在化 # 硝酸イオン # ベンゼン

この教材で学ぶこと

到達目標

  • 共鳴の意味を説明できる
  • 共鳴構造と実際の構造の違いを理解できる
  • 電子の非局在化の基本を説明できる
  • NO₃⁻やCO₃²⁻の共鳴を理解できる
  • ベンゼンの共鳴と安定性を説明できる
  • 共鳴構造を書くときの注意点を理解できる

前提知識

  • ルイス構造
  • 形式電荷
  • 二重結合
  • π結合
  • 有機化学の基礎
目次

1 共鳴とは

共鳴とは、1つのルイス構造だけでは実際の分子やイオンの構造を十分に表せないときに、複数のルイス構造を使って表す考え方です。
この複数のルイス構造を共鳴構造といいます。
実際の分子が、共鳴構造の間を行ったり来たりしているわけではありません。
実際の構造は、複数の共鳴構造が混ざった平均的な構造として考えます。
共鳴は、電子が特定の結合や原子に固定されず、広がって存在することと関係します。
共鳴のイメージ
複数のルイス構造 → 実際はその平均的な構造
分子が構造の間を振動しているという意味ではありません。
確認ポイント
  • 共鳴が複数のルイス構造で表される考え方であることを説明できる
  • 実際の構造は共鳴構造の平均的な構造であることを理解できる
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2 共鳴構造

共鳴構造とは、同じ原子の並びをもち、電子の配置だけが異なるルイス構造です。
共鳴構造では、原子の位置は変えません。
変わるのは、二重結合や孤立電子対、形式電荷などの電子の配置です。
共鳴構造を表すときは、通常の反応矢印ではなく、共鳴を表す両矢印を使います。
共鳴構造は、それぞれが独立した別の分子として存在しているわけではありません。
共鳴構造で変えてよいもの・いけないもの
項目 扱い
原子の並び 変えない
σ結合の骨格 基本的に変えない
π結合の位置 変わることがある
孤立電子対 変わることがある
形式電荷 変わることがある
確認ポイント
  • 共鳴構造では原子の並びを変えないことを説明できる
  • 共鳴で変わるのは主に電子の配置であることを理解できる
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3 電子の非局在化

共鳴では、電子が特定の原子や結合だけに固定されず、複数の原子にまたがって広がっていると考えます。
このように電子が広がって存在することを電子の非局在化といいます。
電子が非局在化すると、電荷や結合の偏りが分散され、構造が安定になることがあります。
硝酸イオン NO₃⁻ や炭酸イオン CO₃²⁻、ベンゼンなどは、電子の非局在化が重要な例です。
非局在化のイメージ
電子が1か所に固定されず、広い範囲に分布する
共鳴による安定化と関係します。
確認ポイント
  • 電子の非局在化の意味を説明できる
  • 非局在化によって構造が安定化することを理解できる
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4 硝酸イオン NO₃⁻ の共鳴

硝酸イオン NO₃⁻ は、共鳴を考える代表的な多原子イオンです。
ルイス構造では、NとOの間に1本の二重結合と2本の単結合を描くことがあります。
しかし、どのOとNの間を二重結合にするかは3通り考えられます。
実際のNO₃⁻では、3つのN-O結合は等価で、完全な単結合や二重結合ではなく、その中間的な性質をもちます。
これはπ電子や負電荷が3つのOに広がっているためです。
NO₃⁻の共鳴
項目 内容
共鳴構造の数 3つ
実際のN-O結合 3本とも等価
電子の状態 負電荷やπ電子が分散
安定性 共鳴により安定化
確認ポイント
  • NO₃⁻に3つの共鳴構造があることを説明できる
  • 実際のN-O結合が等価であることを理解できる
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5 炭酸イオン CO₃²⁻ の共鳴

炭酸イオン CO₃²⁻ も共鳴を考える代表例です。
ルイス構造では、CとOの間に1本の二重結合と2本の単結合を描く形が考えられます。
どのOとの間を二重結合にするかで、3つの共鳴構造が描けます。
実際のCO₃²⁻では、3つのC-O結合は等価で、単結合と二重結合の中間的な性質をもちます。
負電荷は特定のOだけに固定されず、3つのOに分散していると考えます。
CO₃²⁻の共鳴
項目 内容
共鳴構造の数 3つ
実際のC-O結合 3本とも等価
負電荷 3つのOに分散
構造 平面三角形
例題:CO₃²⁻で、3つのC-O結合はすべて同じ長さか。
答え:同じ長さとして扱う
共鳴により、3つのC-O結合は等価で、単結合と二重結合の中間的な性質をもちます。
確認ポイント
  • CO₃²⁻の共鳴構造を説明できる
  • 実際のC-O結合が等価である理由を共鳴から説明できる
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6 ベンゼンの共鳴

ベンゼン C₆H₆ は、共鳴を考える有機化合物の代表例です。
ベンゼンは6個の炭素原子が環状につながった構造をもちます。
ルイス構造では、単結合と二重結合が交互に並ぶ2つの構造を描くことがあります。
しかし実際のベンゼンでは、6本のC-C結合はすべて等価です。
π電子が環全体に非局在化しているため、ベンゼンは特に安定になります。
ベンゼンの分子式
C₆H₆
6個の炭素からなる環状構造をもちます。
ベンゼンの共鳴
項目 内容
分子式 C₆H₆
構造 六員環
C-C結合 6本すべて等価
電子 π電子が環全体に非局在化
特徴 芳香族性による安定性
確認ポイント
  • ベンゼンでπ電子が非局在化していることを説明できる
  • ベンゼンのC-C結合が等価であることを理解できる
  • 共鳴が芳香族化合物の安定性に関係することを理解できる
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7 共鳴による安定化

共鳴によって電子や電荷が広い範囲に分散すると、分子やイオンは安定化することがあります。
電荷が1つの原子に集中するより、複数の原子に分散した方が安定になる場合があります。
NO₃⁻やCO₃²⁻では、負電荷が複数の酸素原子に分散しています。
ベンゼンでは、π電子が環全体に広がることで安定化しています。
このような安定化を、共鳴安定化と呼ぶことがあります。
共鳴安定化の例
物質・イオン 安定化の理由
NO₃⁻ 負電荷が複数のOに分散
CO₃²⁻ 負電荷とπ電子が分散
ベンゼン π電子が環全体に非局在化
カルボキシラートイオン 負電荷が2つのOに分散
確認ポイント
  • 共鳴によって電子や電荷が分散すると安定化することを説明できる
  • 共鳴安定化の代表例を答えられる
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8 共鳴構造を書くときの注意

共鳴構造を書くときは、原子の位置を変えてはいけません。
変えてよいのは、π電子、孤立電子対、形式電荷などの電子配置です。
また、全体の電荷はすべての共鳴構造で同じでなければなりません。
第2周期元素では、オクテットを超えないように注意します。
共鳴構造は、実際に分子がその形で交互に存在しているという意味ではない点も重要です。
共鳴構造の注意点
注意点 内容
原子の位置 変えない
全体の電荷 変えない
変えるもの 電子の配置
第2周期元素 オクテットを超えない
実際の構造 共鳴構造の平均的な構造
確認ポイント
  • 共鳴構造で原子の位置を変えないことを説明できる
  • 全体の電荷を変えてはいけないことを理解できる
  • 共鳴構造と実際の構造を区別できる
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9 共鳴の例題

共鳴の問題では、共鳴構造、電子の非局在化、結合の等価性、共鳴安定化がよく問われます。
NO₃⁻、CO₃²⁻、ベンゼンは代表例として押さえておきましょう。
例題:共鳴構造を書くとき、原子の位置は変えてよいか。
答え:変えてはいけない
共鳴構造では、原子の並びは同じで、電子の配置だけが異なります。
例題:NO₃⁻の3つのN-O結合は実際には等価か。
答え:等価
共鳴により、π電子や負電荷が分散しているため、3本のN-O結合は等価です。
例題:CO₃²⁻で負電荷は特定のOだけに固定されているか。
答え:固定されていない
共鳴により、負電荷は3つのOに分散していると考えます。
例題:ベンゼンが安定な理由の1つを答えなさい。
答え:π電子が環全体に非局在化しているから。
電子が広い範囲に分散することで、ベンゼンは共鳴安定化を受けます。
確認ポイント
  • 共鳴の意味を説明できる
  • NO₃⁻、CO₃²⁻、ベンゼンの共鳴を説明できる
  • 電子の非局在化と安定化を関連づけられる
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