この教材で学ぶこと
到達目標
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溶解平衡とは何かを説明できる
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難溶性塩の溶解を平衡として考えられる
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溶解度積 Ksp の意味を理解できる
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イオン濃度から沈殿が生じるか判断できる
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共通イオン効果によって溶解度が下がることを説明できる
前提知識
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化学平衡
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モル濃度
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沈殿反応
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イオン
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電離平衡の基礎
1
溶解平衡とは
溶解平衡とは、固体が水に溶ける反応と、溶けたイオンが再び固体に戻る反応がつり合った状態です。
特に、AgClやBaSO₄のような水に溶けにくい塩では、溶解平衡の考え方が重要になります。
難溶性塩でも、まったく溶けないわけではなく、ごく少量は水に溶けてイオンになります。
このとき、固体が溶ける速さとイオンが固体に戻る速さが等しくなると、溶解平衡になります。
塩化銀の溶解平衡
AgCl(s) ⇄ Ag⁺(aq) + Cl⁻(aq)
AgClは難溶性ですが、ごく少量はAg⁺とCl⁻に分かれます。
確認ポイント
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溶解平衡が溶解と析出のつり合いであることを説明できる
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難溶性塩でも少量は水に溶けることを理解できる
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2
難溶性塩
難溶性塩とは、水に溶けにくい塩のことです。
代表例には、塩化銀 AgCl、硫酸バリウム BaSO₄、炭酸カルシウム CaCO₃ などがあります。
無機化学の沈殿反応で出てくる白色沈殿や有色沈殿の多くは、難溶性塩として考えられます。
溶解平衡では、これらの固体がどの程度イオンとして水に溶けるかを考えます。
代表的な難溶性塩
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物質
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溶解平衡
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沈殿の特徴
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AgCl
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AgCl ⇄ Ag⁺ + Cl⁻
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白色沈殿
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BaSO₄
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BaSO₄ ⇄ Ba²⁺ + SO₄²⁻
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白色沈殿
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CaCO₃
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CaCO₃ ⇄ Ca²⁺ + CO₃²⁻
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白色沈殿
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PbI₂
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PbI₂ ⇄ Pb²⁺ + 2I⁻
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黄色沈殿
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確認ポイント
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代表的な難溶性塩を答えられる
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難溶性塩が少量だけイオンとして溶けることを説明できる
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3
溶解度積 Ksp
溶解度積 Ksp は、難溶性塩の溶解平衡におけるイオン濃度の積を表す値です。
たとえば、AgCl(s) ⇄ Ag⁺ + Cl⁻ では、Ksp = [Ag⁺][Cl⁻] です。
固体のAgClは式に含めません。
Kspが小さいほど、その塩は水に溶けにくいと考えられます。
溶解度積は、沈殿が生じるかどうかを判断するときにも使います。
注意:平衡定数と同じように、係数は指数になります。
注意:固体は溶解度積の式に含めません。
確認ポイント
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溶解度積 Ksp の意味を説明できる
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AgClやBaSO₄のKspの式を書ける
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係数が指数になることを理解できる
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4
イオン積と沈殿生成
実際の水溶液中でのイオン濃度の積をイオン積といいます。
イオン積が溶解度積より小さい場合、まだ沈殿は生じません。
イオン積が溶解度積に等しい場合、溶解平衡の状態です。
イオン積が溶解度積より大きい場合、溶けきれない分が沈殿として生じます。
つまり、沈殿ができるかどうかは、イオン積とKspを比較して判断できます。
イオン積と沈殿の判断
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条件
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状態
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イオン積 < Ksp
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沈殿は生じない
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イオン積 = Ksp
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飽和・溶解平衡
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イオン積 > Ksp
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沈殿が生じる
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例題:AgClについて、[Ag⁺][Cl⁻] が Ksp より大きいとき、沈殿は生じるか。
答え:生じる
イオン積が溶解度積を超えると、溶けきれない分がAgClとして沈殿します。
確認ポイント
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イオン積とKspを比較して沈殿の有無を判断できる
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イオン積がKspより大きいと沈殿が生じることを説明できる
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5
共通イオン効果
共通イオン効果とは、平衡に関係するイオンを外から加えることで、平衡が移動する現象です。
たとえば、AgClの溶解平衡 AgCl ⇄ Ag⁺ + Cl⁻ において、Cl⁻を多く含む溶液を加えると、Cl⁻が増えます。
すると、増えたCl⁻を減らす向き、つまりAgClの固体ができる向きに平衡が移動します。
その結果、AgClの溶解度は小さくなります。
これはルシャトリエの原理で説明できます。
AgClの共通イオン効果
AgCl(s) ⇄ Ag⁺ + Cl⁻
Cl⁻を加えると、平衡は左へ移動し、AgClが溶けにくくなります。
共通イオン効果の例
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溶解平衡
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加えるイオン
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平衡移動
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結果
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AgCl ⇄ Ag⁺ + Cl⁻
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Cl⁻
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左へ
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AgClが溶けにくくなる
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BaSO₄ ⇄ Ba²⁺ + SO₄²⁻
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SO₄²⁻
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左へ
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BaSO₄が溶けにくくなる
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確認ポイント
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共通イオン効果を説明できる
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共通イオンを加えると難溶性塩の溶解度が下がることを理解できる
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ルシャトリエの原理と関連づけて考えられる
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6
分別沈殿
分別沈殿とは、複数のイオンが混ざった水溶液から、沈殿のしやすさの違いを利用して特定のイオンを分離する方法です。
Kspが小さい塩ほど沈殿しやすい傾向があります。
たとえば、Ag⁺やCl⁻のように非常に沈殿しやすい組み合わせは、少量のイオンでも沈殿を作ります。
無機化学の金属イオンの系統分離にも、溶解度や沈殿生成の考え方が関係しています。
分別沈殿の考え方
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見る点
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意味
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Kspが小さい
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沈殿しやすい
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Kspが大きい
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比較的溶けやすい
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加える試薬
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特定のイオンと難溶性塩を作るものを選ぶ
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目的
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イオンを分離・確認する
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確認ポイント
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分別沈殿の意味を説明できる
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Kspが小さいほど沈殿しやすいことを理解できる
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無機化学の沈殿反応と溶解平衡を関連づけられる
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7
溶解平衡の例題
溶解平衡の問題では、溶解度積の式、イオン積との比較、共通イオン効果がよく問われます。
まずは、沈殿の式を書き、どのイオンが何個出るかを確認しましょう。
例題:AgCl(s) ⇄ Ag⁺ + Cl⁻ の溶解度積の式を書きなさい。
答え:Ksp = [Ag⁺][Cl⁻]
AgClはAg⁺とCl⁻を1:1で生じるため、Ksp = [Ag⁺][Cl⁻]です。
例題:PbI₂(s) ⇄ Pb²⁺ + 2I⁻ の溶解度積の式を書きなさい。
答え:Ksp = [Pb²⁺][I⁻]²
I⁻の係数が2なので、濃度は2乗になります。
例題:AgClの溶解平衡にNaClを加えると、AgClの溶解度は大きくなるか小さくなるか。
答え:小さくなる
NaClからCl⁻が増えるため、共通イオン効果により平衡はAgCl固体側へ移動します。
確認ポイント
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溶解度積の式を書ける
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イオン積とKspを比較できる
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共通イオン効果による平衡移動を説明できる
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