理論化学 / thermodynamics

熱力学の基礎

熱力学で扱う系・外界・状態量・内部エネルギー・熱・仕事・熱力学第一法則をまとめた教材です。
難易度:発展 目安:50分
# 理論化学 # 物理化学 # 熱力学 # 内部エネルギー # 熱 # 仕事 # 状態量

この教材で学ぶこと

到達目標

  • 熱力学でいう系と外界を説明できる
  • 状態量と経路に依存する量を区別できる
  • 内部エネルギーの意味を理解できる
  • 熱 q と仕事 w の違いを説明できる
  • 熱力学第一法則 ΔU = q + w を使える
  • 定圧条件とエンタルピーの関係を理解できる

前提知識

  • エネルギー
  • エンタルピー
  • 気体の状態方程式
  • 物質量 mol
  • 単位 J・kJ
目次

1 熱力学とは

熱力学とは、熱、仕事、エネルギーの変化を扱う分野です。
化学反応や状態変化では、物質の変化だけでなく、エネルギーの出入りも起こります。
熱力学では、反応が熱を放出するのか、熱を吸収するのか、外界に仕事をするのかなどを整理します。
化学では、エンタルピー、エントロピー、ギブズエネルギーなどが重要な量として登場します。
物理化学の基礎では、まず系、外界、内部エネルギー、熱、仕事の意味を理解することが大切です。
熱力学で扱うもの
エネルギーの変化 = 熱の出入り + 仕事の出入り
化学反応や状態変化をエネルギーの観点から考えます。
確認ポイント
  • 熱力学が熱・仕事・エネルギーを扱う分野であることを説明できる
  • 化学反応とエネルギー変化を関連づけられる
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2 系と外界

熱力学では、注目する対象を系といいます。
系のまわりにあるものを外界といいます。
たとえば、ビーカーの中の反応溶液を考える場合、その溶液を系、ビーカーや空気などを外界として考えます。
系と外界の間では、熱や仕事、物質が出入りする場合があります。
どこまでを系として考えるかを決めることが、熱力学の出発点です。
系と外界
用語 意味
注目する対象 反応溶液、気体、化学反応
外界 系のまわり ビーカー、空気、実験室
境界 系と外界の境目 容器の壁など
確認ポイント
  • 系と外界を区別できる
  • 反応溶液などを系として考えられる
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3 開いた系・閉じた系・孤立系

系は、外界とのやりとりのしかたによって分類できます。
開いた系は、物質もエネルギーも外界とやりとりできます。
閉じた系は、エネルギーはやりとりできますが、物質はやりとりしません。
孤立系は、物質もエネルギーも外界とやりとりしない理想的な系です。
実際の実験では完全な孤立系を作るのは難しいですが、考え方として重要です。
系の分類
系の種類 物質の出入り エネルギーの出入り
開いた系 ある ある ふたのないビーカー
閉じた系 ない ある 密閉容器
孤立系 ない ない 理想的な断熱容器
確認ポイント
  • 開いた系・閉じた系・孤立系を区別できる
  • 物質とエネルギーの出入りで分類できる
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4 状態量

状態量とは、その状態だけで値が決まり、途中の経路に依存しない量です。
温度、圧力、体積、内部エネルギー、エンタルピーなどは状態量です。
たとえば、ある地点の高さは、どの道を通ってそこへ行ったかに関係なく決まります。
同じように、状態量の変化は、最初と最後の状態だけで決まります。
一方、熱 q や仕事 w は、途中の経路によって値が変わるため、状態量ではありません。
状態量と経路に依存する量
分類 特徴
状態量 温度、圧力、体積、内部エネルギー、エンタルピー 始状態と終状態だけで決まる
経路に依存する量 熱 q、仕事 w 途中の過程によって変わる
確認ポイント
  • 状態量の意味を説明できる
  • 熱や仕事が状態量ではないことを理解できる
  • 内部エネルギーやエンタルピーが状態量であることを覚える
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5 内部エネルギー U

内部エネルギー U とは、系が内部にもっているエネルギーの総量を表す状態量です。
分子の運動エネルギー、分子間相互作用、結合エネルギーなどが関係します。
熱力学では、内部エネルギーそのものの絶対値よりも、変化量 ΔU を考えることが多いです。
系が熱を受け取ったり、外界から仕事をされたりすると、内部エネルギーは増加します。
逆に、系が熱を放出したり、外界に仕事をしたりすると、内部エネルギーは減少します。
内部エネルギー変化
ΔU = U(終状態) - U(始状態)
内部エネルギーは状態量なので、始状態と終状態で変化量が決まります。
確認ポイント
  • 内部エネルギーが系の内部にもつエネルギーであることを説明できる
  • 内部エネルギーでは変化量ΔUをよく考えることを理解できる
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6 熱 q

熱 q とは、温度差によって系と外界の間を移動するエネルギーです。
系が外界から熱を受け取る場合、q は正として扱います。
系が外界へ熱を放出する場合、q は負として扱います。
発熱反応では、系から外界へ熱が出るため、系から見た q は負になります。
吸熱反応では、系が外界から熱を受け取るため、系から見た q は正になります。
熱 q の符号
状況 系から見た q 意味
系が熱を受け取る 吸熱
系が熱を放出する 発熱
確認ポイント
  • 熱が温度差によって移動するエネルギーであることを説明できる
  • 系が熱を受け取るとqが正、放出するとqが負になることを理解できる
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7 仕事 w

仕事 w とは、力によってエネルギーが移動することです。
化学熱力学では、特に気体の膨張・圧縮による仕事がよく出てきます。
外界が系に仕事をする場合、w は正として扱います。
系が外界に仕事をする場合、w は負として扱います。
気体が膨張して外界を押すと、系が外界に仕事をするので w は負になります。
定圧での膨張仕事のイメージ
w = -PΔV
体積が増える膨張ではΔVが正なので、wは負になります。
仕事 w の符号
状況 系から見た w 意味
外界が系に仕事をする 圧縮など
系が外界に仕事をする 膨張など
確認ポイント
  • 仕事wが力によるエネルギー移動であることを説明できる
  • 膨張では系が外界に仕事をするためwが負になることを理解できる
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8 熱力学第一法則

熱力学第一法則は、エネルギー保存の法則を熱力学に適用したものです。
系の内部エネルギー変化 ΔU は、系に出入りした熱 q と仕事 w の和で表されます。
式で表すと、ΔU = q + w です。
系が熱を受け取ったり、外界から仕事をされたりすると内部エネルギーは増加します。
系が熱を放出したり、外界に仕事をしたりすると内部エネルギーは減少します。
熱力学第一法則
ΔU = q + w
内部エネルギー変化は、熱と仕事によるエネルギー変化の合計です。
例題:系が熱を50 kJ受け取り、外界に20 kJの仕事をした。このときΔUはいくらか。
答え:30 kJ
q = +50 kJ、w = -20 kJなので、ΔU = 50 + (-20) = 30 kJです。
確認ポイント
  • 熱力学第一法則 ΔU = q + w を説明できる
  • 熱と仕事の符号を使ってΔUを計算できる
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9 定積条件と定圧条件

熱力学では、どの条件で反応や変化が起こるかが重要です。
定積条件では体積が一定なので、膨張仕事がありません。
そのため、定積条件での熱は内部エネルギー変化と対応します。
一方、定圧条件では圧力が一定で、体積変化による仕事が関係します。
化学反応は大気圧下で行われることが多いため、定圧条件での熱、つまりエンタルピー変化 ΔH がよく使われます。
定圧熱とエンタルピー
qp = ΔH
圧力一定の条件では、出入りする熱はエンタルピー変化に対応します。
定積条件と定圧条件
条件 一定の量 熱との関係
定積条件 体積 qv = ΔU
定圧条件 圧力 qp = ΔH
確認ポイント
  • 定積条件ではqvがΔUに対応することを理解できる
  • 定圧条件ではqpがΔHに対応することを理解できる
  • 化学反応でエンタルピーがよく使われる理由を説明できる
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10 熱力学の基礎例題

熱力学の基礎では、系と外界、状態量、熱と仕事の符号、熱力学第一法則がよく問われます。
特に、qとwの符号を丁寧に確認することが大切です。
例題:温度、圧力、内部エネルギーは状態量か。
答え:状態量である
これらは途中の経路ではなく、その状態によって値が決まります。
例題:熱 q は状態量か。
答え:状態量ではない
熱は途中の過程によって変わるため、状態量ではありません。
例題:系が外界へ熱を放出するとき、qの符号は正か負か。
答え:負
系からエネルギーが出ていくため、qは負です。
例題:系が外界に仕事をするとき、wの符号は正か負か。
答え:負
系から外界へエネルギーが仕事として出ていくため、wは負です。
例題:熱力学第一法則の式を書きなさい。
答え:ΔU = q + w
内部エネルギー変化は、熱と仕事によるエネルギーの出入りの和です。
確認ポイント
  • 状態量と経路依存量を区別できる
  • qとwの符号を判断できる
  • ΔU = q + w を使える
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