理論化学 / ionization_equilibrium

電離平衡の基礎

弱酸・弱塩基の電離、電離度、電離定数、平衡の考え方を基礎からまとめた教材です。
難易度:発展 目安:45分
# 理論化学 # 電離平衡 # 弱酸 # 弱塩基 # 電離度 # 電離定数 # 平衡

この教材で学ぶこと

到達目標

  • 電離平衡とは何かを説明できる
  • 弱酸・弱塩基で平衡を考える理由を理解できる
  • 電離度の意味を説明できる
  • 電離定数 Ka・Kb の基本的な意味を理解できる
  • 濃度・電離度・pHの関係を大まかに説明できる

前提知識

  • pH
  • 酸・塩基
  • モル濃度
  • 化学平衡の基礎
  • 強酸・弱酸、強塩基・弱塩基
目次

1 電離平衡とは

電離平衡とは、弱酸や弱塩基が水溶液中で一部だけ電離し、電離する反応と元に戻る反応がつり合った状態です。
強酸や強塩基は、基本的にほぼ完全に電離すると考えます。
一方、弱酸や弱塩基は一部だけ電離するため、平衡として扱います。
たとえば、酢酸 CH₃COOH は水溶液中で一部だけ H⁺ と CH₃COO⁻ に分かれます。
酢酸の電離平衡
CH₃COOH ⇄ CH₃COO⁻ + H⁺
酢酸は弱酸なので、一部だけ電離して平衡になります。
アンモニアの電離平衡
NH₃ + H₂O ⇄ NH₄⁺ + OH⁻
アンモニアは弱塩基なので、水と反応して一部だけOH⁻を生じます。
確認ポイント
  • 電離平衡が弱酸・弱塩基で重要になることを説明できる
  • 強酸と弱酸の扱いの違いを理解できる
  • 酢酸の電離式を書ける
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2 強酸と弱酸の違い

強酸は、水溶液中でほぼ完全に電離します。
弱酸は、一部だけ電離して平衡状態になります。
同じ濃度の酸でも、強酸の方がH⁺濃度が大きくなりやすく、pHは小さくなりやすいです。
弱酸では、もとの酸分子が多く残っている点が重要です。
強酸と弱酸の比較
分類 電離の程度 pHの傾向
強酸 ほぼ完全に電離 HCl、HNO₃ 同濃度なら小さくなりやすい
弱酸 一部だけ電離 CH₃COOH、H₂CO₃ 同濃度なら強酸より大きくなりやすい
注意:弱酸は濃度が高くても、すべてがH⁺を出すわけではありません。
注意:このため、弱酸のpHを考えるには電離度や電離定数が関係します。
確認ポイント
  • 強酸と弱酸の違いを電離の程度で説明できる
  • 弱酸では未電離の分子が残ることを理解できる
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3 電離度

電離度とは、溶かした酸や塩基のうち、どれくらいの割合が電離したかを表す値です。
電離度はふつう α で表します。
たとえば、電離度 α = 0.01 なら、全体の1%が電離したという意味です。
強酸では電離度が1に近く、弱酸では電離度が小さい値になります。
電離度
電離度 α = 電離した物質量 ÷ 溶かした物質量
電離した割合を表します。
電離度のイメージ
電離度 意味
α = 1 ほぼ100%電離
α = 0.1 10%電離
α = 0.01 1%電離
αが小さい 電離しにくい弱酸・弱塩基
例題:0.10 mol の酢酸のうち 0.0010 mol が電離した。電離度はいくらか。
答え:0.010
0.0010 ÷ 0.10 = 0.010 です。これは1.0%が電離したことを表します。
確認ポイント
  • 電離度の意味を説明できる
  • 電離度を割合として理解できる
  • 強酸では電離度が大きく、弱酸では小さいことを理解できる
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4 弱酸の電離とH⁺濃度

弱酸 HA が濃度 c mol/L で、電離度を α とすると、電離して生じる H⁺ 濃度はおよそ cα で表せます。
これは、全体のうち α の割合だけが電離してH⁺を出すと考えるためです。
強酸ではほぼすべてが電離するので、H⁺濃度は酸の濃度に近くなります。
弱酸では一部だけ電離するため、H⁺濃度は酸の濃度より小さくなります。
弱酸のH⁺濃度のイメージ
[H⁺] ≒ cα
cは弱酸の濃度、αは電離度です。
例題:0.10 mol/L の弱酸 HA の電離度が0.010のとき、[H⁺]はおよそ何 mol/L か。
答え:1.0×10⁻³ mol/L
[H⁺] ≒ cα = 0.10×0.010 = 0.0010 = 1.0×10⁻³ mol/L です。
確認ポイント
  • 弱酸のH⁺濃度をcαで考えられる
  • 弱酸では酸の濃度よりH⁺濃度が小さくなることを理解できる
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5 電離定数 Ka

弱酸の電離のしやすさを表す値として、酸の電離定数 Ka があります。
弱酸 HA の電離を HA ⇄ H⁺ + A⁻ とすると、Kaは平衡状態での濃度から決まります。
Kaが大きいほど電離しやすく、酸として強い傾向があります。
Kaが小さいほど電離しにくく、弱い酸として扱われます。
弱酸HAの電離定数
Ka = [H⁺][A⁻] ÷ [HA]
HA ⇄ H⁺ + A⁻ の平衡で使います。
Kaの見方
Ka 意味
大きい 電離しやすい、酸性が強い傾向
小さい 電離しにくい、弱い酸
注意:高校化学では、Kaを使った厳密な計算よりも、Kaが酸の強さを表すことをまず理解しましょう。
注意:pKaという値を使うこともありますが、ChemStudyではあとで発展教材として扱えます。
確認ポイント
  • Kaが酸の電離しやすさを表すことを理解できる
  • Kaが大きいほど酸が強い傾向があることを説明できる
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6 弱塩基の電離とKb

弱塩基では、塩基が水と反応して一部だけOH⁻を生じます。
代表例はアンモニア NH₃ です。
アンモニアは水と反応して NH₄⁺ と OH⁻ を生じますが、完全には反応しません。
弱塩基の電離のしやすさは、塩基の電離定数 Kb で表すことがあります。
アンモニアのKbのイメージ
Kb = [NH₄⁺][OH⁻] ÷ [NH₃]
水は濃度がほぼ一定なので、式には入れない形で扱います。
アンモニアの電離
NH₃ + H₂O ⇄ NH₄⁺ + OH⁻
アンモニアは弱塩基なので、一部だけOH⁻を生じます。
確認ポイント
  • 弱塩基が一部だけOH⁻を生じることを説明できる
  • アンモニアの電離式を書ける
  • Kbが弱塩基の電離しやすさを表すことを理解できる
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7 平衡の移動と電離

電離平衡では、条件を変えると平衡の位置が変わることがあります。
たとえば、弱酸の水溶液に共通イオンを加えると、電離が抑えられることがあります。
酢酸水溶液に酢酸ナトリウムを加えると、CH₃COO⁻ が増えるため、酢酸の電離が抑えられます。
このような考え方は、緩衝液の理解にもつながります。
酢酸の電離
CH₃COOH ⇄ CH₃COO⁻ + H⁺
CH₃COO⁻を加えると、平衡は左に移動しやすくなります。
注意:共通イオン効果や緩衝液は発展内容ですが、電離平衡の応用として重要です。
注意:まずは、平衡は条件によって左右に移動するというイメージを持ちましょう。
確認ポイント
  • 電離平衡が条件によって移動することを理解できる
  • 共通イオンを加えると電離が抑えられる場合があることを知る
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8 電離平衡の例題

電離平衡の問題では、強酸・弱酸の区別、電離度、KaやKbの意味がよく問われます。
計算に入る前に、完全に電離するのか、一部だけ電離するのかを判断しましょう。
例題:酢酸 CH₃COOH は強酸か弱酸か。
答え:弱酸
酢酸は水溶液中で一部だけ電離する弱酸です。
例題:電離度 α は何を表す値か。
答え:溶かした物質のうち、どれくらいの割合が電離したかを表す値。
電離度は、電離した物質量を溶かした物質量で割った値です。
例題:Kaが大きい酸は、一般に電離しやすいか、しにくいか。
答え:電離しやすい
Kaが大きいほど、弱酸HAがH⁺とA⁻に分かれやすい傾向があります。
例題:アンモニア NH₃ が塩基性を示す反応式を書きなさい。
答え:NH₃ + H₂O ⇄ NH₄⁺ + OH⁻
アンモニアは水からH⁺を受け取り、OH⁻を生じるため塩基性を示します。
確認ポイント
  • 強酸・弱酸、強塩基・弱塩基を判断できる
  • 電離度の意味を説明できる
  • Ka・Kbの基本的な意味を理解できる
  • 電離平衡を反応式で表せる
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