理論化学 / neutralization_titration

中和滴定

酸と塩基の中和反応を利用して濃度を求める中和滴定について、原理、計算、指示薬、実験操作をまとめた教材です。
難易度:標準 目安:45分
# 理論化学 # 中和滴定 # 酸 # 塩基 # 中和 # モル濃度 # 指示薬

この教材で学ぶこと

到達目標

  • 中和滴定の目的を説明できる
  • 中和点で酸と塩基が過不足なく反応することを理解できる
  • 酸と塩基の価数を考慮して計算できる
  • 滴定曲線と指示薬の基本を理解できる
  • ビュレット・ホールピペット・メスフラスコの役割を説明できる

前提知識

  • 酸・塩基
  • 中和反応
  • モル濃度
  • 物質量 mol
  • 化学反応式と量的関係
目次

1 中和滴定とは

中和滴定とは、濃度が分かっている酸または塩基の水溶液を使って、濃度が分からない塩基または酸の濃度を求める実験です。
酸と塩基が中和するときの量的関係を利用します。
中和点では、酸から出る H⁺ の物質量と、塩基から出る OH⁻ の物質量が等しくなります。
中和滴定では、ビュレットから少しずつ標準液を加え、指示薬の色の変化などで終点を判断します。
中和の本質
H⁺ + OH⁻ → H₂O
酸由来のH⁺と塩基由来のOH⁻が反応します。
確認ポイント
  • 中和滴定が未知濃度を求める実験であることを説明できる
  • 中和点でH⁺とOH⁻が過不足なく反応することを理解できる
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2 中和点と終点

中和点とは、酸と塩基が化学反応式どおりに過不足なく反応した点です。
終点とは、実験で指示薬の色の変化などによって滴定を止める点です。
理想的には中和点と終点が一致するのが望ましいです。
実際には、指示薬の変色範囲などの影響で、完全に一致しないこともあります。
そのため、反応に合った指示薬を選ぶことが重要です。
中和点と終点
用語 意味
中和点 酸と塩基が過不足なく反応した理論上の点
終点 指示薬の色の変化などで実験的に判断する点
確認ポイント
  • 中和点と終点を区別できる
  • 指示薬で終点を判断することを説明できる
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3 中和滴定の基本式

中和滴定では、酸が出すH⁺の物質量と、塩基が出すOH⁻の物質量が等しくなることを使います。
酸の価数をa、酸のモル濃度をc、体積をVとすると、酸が出すH⁺の物質量は a×c×V です。
塩基の価数をb、塩基のモル濃度をc'、体積をV'とすると、塩基が出すOH⁻の物質量は b×c'×V' です。
中和点では、この2つが等しくなります。
中和滴定の基本式
a c V = b c' V'
aは酸の価数、bは塩基の価数です。体積は同じ単位でそろえます。
一価酸と一価塩基の場合
cV = c'V'
HClとNaOHのように1:1で反応する場合です。
注意:体積はLでもmLでも、両辺で同じ単位なら計算できます。
注意:ただし、物質量を直接求めるときはLに直す習慣をつけると安全です。
確認ポイント
  • 中和滴定の基本式を使える
  • 酸と塩基の価数を考慮できる
  • 一価酸・一価塩基ではcV = c'V'になることを理解できる
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4 酸と塩基の価数

中和滴定では、酸や塩基が何個のH⁺やOH⁻を出すかが重要です。
塩酸 HCl は1分子からH⁺を1個出すので一価の酸です。
硫酸 H₂SO₄ は1分子からH⁺を2個出せるので二価の酸です。
水酸化ナトリウム NaOH はOH⁻を1個出すので一価の塩基です。
水酸化カルシウム Ca(OH)₂ はOH⁻を2個出せるので二価の塩基です。
代表的な酸・塩基の価数
物質 化学式 価数 理由
塩酸 HCl 1価の酸 H⁺を1個出す
硝酸 HNO₃ 1価の酸 H⁺を1個出す
硫酸 H₂SO₄ 2価の酸 H⁺を2個出せる
水酸化ナトリウム NaOH 1価の塩基 OH⁻を1個出す
水酸化カリウム KOH 1価の塩基 OH⁻を1個出す
水酸化カルシウム Ca(OH)₂ 2価の塩基 OH⁻を2個出せる
確認ポイント
  • 代表的な酸と塩基の価数を答えられる
  • 価数が中和計算に関係することを理解できる
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5 一価酸と一価塩基の滴定

HClとNaOHのような一価酸と一価塩基の中和では、HClとNaOHは1:1のmol比で反応します。
この場合、中和点では酸の物質量と塩基の物質量が等しくなります。
そのため、cV = c'V' を使って計算できます。
最も基本的な中和滴定の形なので、まずここを確実にしましょう。
塩酸と水酸化ナトリウム
HCl + NaOH → NaCl + H₂O
HCl : NaOH = 1 : 1 で反応します。
例題:0.100 mol/L のHCl 20.0 mLを中和するのに、NaOH水溶液 25.0 mLを要した。NaOHのモル濃度を求めなさい。
答え:0.0800 mol/L
HClとNaOHは1:1で反応します。0.100×20.0 = c×25.0 より、c = 0.0800 mol/Lです。
確認ポイント
  • 一価酸と一価塩基の1:1反応を使える
  • cV = c'V'で濃度を求められる
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6 二価の酸・塩基が関係する滴定

硫酸 H₂SO₄ や水酸化カルシウム Ca(OH)₂ のように、2価の酸・塩基が関係する場合は、価数を考える必要があります。
たとえば、H₂SO₄はH⁺を2個出せるため、NaOHとは 1 : 2 のmol比で反応します。
このとき、酸のmol数と塩基のmol数が等しいわけではありません。
H⁺のmol数とOH⁻のmol数が等しくなるように考えます。
硫酸と水酸化ナトリウム
H₂SO₄ + 2NaOH → Na₂SO₄ + 2H₂O
H₂SO₄ : NaOH = 1 : 2 です。
塩酸と水酸化カルシウム
2HCl + Ca(OH)₂ → CaCl₂ + 2H₂O
HCl : Ca(OH)₂ = 2 : 1 です。
例題:0.100 mol/L のH₂SO₄ 10.0 mLを完全に中和するには、0.100 mol/L のNaOHは何 mL必要か。
答え:20.0 mL
H₂SO₄は2価の酸なので、NaOHは2倍のmolが必要です。同じ濃度なら体積も2倍になり、20.0 mL必要です。
確認ポイント
  • 二価の酸・塩基では価数を考慮できる
  • 反応式の係数から必要量を判断できる
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7 指示薬

中和滴定では、中和の終点を判断するために指示薬を使うことがあります。
指示薬は、pHによって色が変化する物質です。
代表的な指示薬には、フェノールフタレイン、メチルオレンジ、メチルレッドなどがあります。
酸と塩基の強弱によって、適した指示薬が変わります。
代表的な指示薬
指示薬 酸性側 塩基性側 よく使う場面
フェノールフタレイン 無色 赤色 強酸と強塩基、弱酸と強塩基
メチルオレンジ 赤色 黄色 強酸と弱塩基など
メチルレッド 赤色 黄色 酸性側の変色を見たい場合
注意:フェノールフタレインは塩基性側で赤色になります。
注意:指示薬は、滴定曲線の急激にpHが変化する範囲に合うものを選びます。
確認ポイント
  • 代表的な指示薬と色の変化を答えられる
  • 反応に合った指示薬を選ぶ必要があることを理解できる
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8 滴定曲線

滴定曲線とは、滴定で加えた溶液の体積とpHの変化を表したグラフです。
中和点付近では、pHが急激に変化します。
強酸と強塩基の滴定では、中和点付近でpHが大きく変化し、pH 7 付近を通ります。
弱酸と強塩基、強酸と弱塩基では、中和点のpHが7からずれることがあります。
指示薬は、この急激なpH変化の範囲に合うものを選びます。
滴定曲線の特徴
滴定の種類 中和点付近の特徴 指示薬の例
強酸 + 強塩基 pH 7付近で急変 フェノールフタレイン、メチルオレンジなど
弱酸 + 強塩基 中和点は塩基性側 フェノールフタレイン
強酸 + 弱塩基 中和点は酸性側 メチルオレンジなど
確認ポイント
  • 滴定曲線がpH変化を表すグラフであることを説明できる
  • 中和点付近でpHが急変することを理解できる
  • 中和点のpHが酸・塩基の強弱で変わることを知る
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9 中和滴定の器具

中和滴定では、正確な体積を測るために専用の器具を使います。
ビュレットは、滴下した液体の体積を正確に測るために使います。
ホールピペットは、一定体積の溶液を正確に取るために使います。
メスフラスコは、決まった濃度の水溶液を正確に調製するために使います。
三角フラスコは、滴定される溶液を入れて反応させる容器として使います。
中和滴定で使う器具
器具 役割
ビュレット 滴下した標準液の体積を測る
ホールピペット 一定体積の試料溶液を正確に取る
メスフラスコ 一定体積の溶液を正確に調製する
三角フラスコ 試料溶液を入れて滴定する
駒込ピペット 指示薬を数滴加える
注意:ビュレットやホールピペットは精密な体積測定に使います。
注意:メスシリンダーは便利ですが、滴定用の正確な測定には向かない場合があります。
確認ポイント
  • 滴定で使う器具の名前と役割を説明できる
  • ビュレットとホールピペットの違いを理解できる
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10 実験操作で注意すること

中和滴定では、少しの操作ミスが濃度の計算結果に影響します。
ビュレットの目盛りは、液面の下端を水平に読めるようにします。
終点付近では、1滴ずつゆっくり加えます。
三角フラスコの内壁についた液は、純水で洗い落としても、溶質の量は変わらないため問題ありません。
ただし、ホールピペットやビュレットの内部を水で濡れたまま使うと、溶液が薄まる可能性があります。
滴定操作の注意
操作 注意点
ビュレットの読み取り 液面の下端を読む
終点付近 1滴ずつ加える
三角フラスコの内壁 純水で洗い落としてよい
ホールピペット 使用する溶液で共洗いする
ビュレット 使用する標準液で共洗いする
確認ポイント
  • 滴定操作で誤差が出やすい点を説明できる
  • 共洗いの意味を理解できる
  • 三角フラスコ内壁を純水で洗ってよい理由を説明できる
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11 中和滴定の例題

中和滴定の問題では、酸と塩基の価数、濃度、体積を整理することが重要です。
一価酸と一価塩基なら cV = c'V' を使いやすいですが、二価の酸や塩基が出る場合は反応式や価数を必ず確認しましょう。
例題:0.100 mol/L のNaOH水溶液 20.0 mLを中和するのに、HCl水溶液 25.0 mLを要した。HClの濃度を求めなさい。
答え:0.0800 mol/L
HClとNaOHは1:1で反応します。c×25.0 = 0.100×20.0 より、c = 0.0800 mol/Lです。
例題:0.0500 mol/L のH₂SO₄ 20.0 mLを中和するのに必要な0.100 mol/L NaOHは何 mLか。
答え:20.0 mL
H₂SO₄は2価の酸です。H⁺のmolは2×0.0500×20.0。NaOHは1価なので、0.100×V = 2×0.0500×20.0 より、V = 20.0 mLです。
例題:フェノールフタレインは酸性側と塩基性側で何色か。
答え:酸性側で無色、塩基性側で赤色
フェノールフタレインは中和滴定でよく使う指示薬で、塩基性側で赤色を示します。
確認ポイント
  • 中和滴定の計算ができる
  • 酸・塩基の価数を考慮できる
  • 指示薬と実験器具の基本を説明できる
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