実験 / experiment_organic

カルボン酸とエステルの識別実験

炭酸水素ナトリウムとの反応、エステルの香り、加水分解を通して、カルボン酸とエステルの性質の違いを見分ける実験教材です。
実験教材
難易度:標準 目安:40分
# 実験 # 有機化学 # カルボン酸 # エステル # 識別反応 # 加水分解 # けん化

この教材で学ぶこと

到達目標

  • カルボン酸がNaHCO₃と反応してCO₂を発生する理由を説明できる
  • エステルの香りと構造の関係を説明できる
  • エステルの酸性加水分解とけん化の違いを説明できる
  • カルボン酸とエステルを反応結果から判別できる

前提知識

  • カルボン酸
  • エステル
  • 酸と塩基
  • 有機化合物の識別反応早覚え表
  • 有機反応経路早覚え表

図・写真

※スマホで画像が見づらい場合は、画像を拡大表示するか、別タブで開くと確認しやすいです。

STEP 1 カルボン酸とNaHCO₃
カルボン酸に炭酸水素ナトリウムを加えて気体が発生する模式図
カルボン酸に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えると、二酸化炭素が発生する。泡の発生が識別に使える。
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Credit: ChemStudy 自作図 License: Original
STEP 2 エステル化と加水分解
カルボン酸とアルコールからエステルができ、加水分解で戻る流れを示した図
カルボン酸とアルコールからエステルができる。酸性条件で加水分解するとカルボン酸とアルコールに戻る。
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Credit: ChemStudy 自作図 License: Original
STEP 3 酸性加水分解とけん化の違い
エステルの酸性加水分解とけん化の生成物の違いを比較する模式図
酸性加水分解ではカルボン酸とアルコールができるが、けん化ではカルボン酸塩とアルコールができる。
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Credit: ChemStudy 自作図 License: Original

実験情報

目的

カルボン酸とエステルの性質の違いを、気体発生、におい、加水分解の結果から判定する。

原理

カルボン酸は酸性を示し、炭酸水素ナトリウムと反応して二酸化炭素を発生する。一方、エステルは中性に近く、通常NaHCO₃とは反応しにくい。また、エステルは果実のような香りをもつものが多く、加水分解によってカルボン酸とアルコールに分かれる。塩基性条件で加水分解すると、カルボン酸ではなくカルボン酸塩が生じる。

器具

  • 試験管
  • 試験管立て
  • スポイト
  • ビーカー
  • 湯浴
  • ガラス棒
  • 保護メガネ
  • 手袋

試薬

  • 酢酸
  • 酢酸エチル
  • エタノール
  • 炭酸水素ナトリウム水溶液
  • 希硫酸または希塩酸
  • 水酸化ナトリウム水溶液
  • リトマス紙またはpH試験紙

手順

  1. 保護メガネと手袋を着用し、使用する試薬を確認する。
  2. 試験管に酢酸を少量入れ、炭酸水素ナトリウム水溶液を加える。
  3. 泡の発生があるか観察する。
  4. 別の試験管に酢酸エチルを入れ、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて比較する。
  5. 酢酸と酢酸エチルのにおいを、直接かがずに手であおぐようにして確認する。
  6. 酢酸エチルに水と少量の酸を加え、湯浴で温める。
  7. 加水分解後のにおいの変化や酸性の変化を確認する。
  8. 別の試験管で酢酸エチルにNaOH水溶液を加え、湯浴で温める。
  9. 酸性加水分解とけん化で生成物が異なることを表にまとめる。

観察結果

試料 結果
酢酸 + NaHCO₃水溶液 泡が発生する。CO₂が発生している
酢酸エチル + NaHCO₃水溶液 通常、気体は発生しにくい
酢酸 刺激臭があり、酸性を示す
酢酸エチル 果実のような香りをもつ
酢酸エチル + H₂O + H⁺ 酢酸とエタノールに加水分解される
酢酸エチル + NaOH水溶液 酢酸ナトリウムとエタノールが生じる

安全上の注意

  • 酢酸やエステルのにおいを直接吸い込まない。手であおぐようにして確認する。
  • 酢酸は刺激性があるため、皮膚や目につけない。
  • 酢酸エチルは引火性があるため、火気に近づけない。
  • 加熱するときは試験管の口を人に向けない。
  • NaOH水溶液は皮膚につくと危険なので、手袋を着用する。
  • こぼした場合は自己判断で処理せず、教員や指導者に知らせる。

廃液・廃棄

  • 有機溶媒を含む廃液は、指定された有機廃液容器に入れる。
  • 酸や塩基を含む廃液は、指導者の指示に従って処理する。
  • 反応後の試験管は、指定された方法で洗浄する。
  • においの強い廃液を放置しない。

早覚え表

印刷・PDF保存・CSVダウンロードに対応しています。

カルボン酸とエステルの識別

対象 試薬・操作 観察結果 判断できること
カルボン酸 NaHCO₃水溶液 CO₂が発生する カルボキシ基をもつ酸
エステル NaHCO₃水溶液 通常CO₂は発生しにくい カルボン酸ではない
カルボン酸 pH試験紙 酸性を示す 水溶液中でH⁺を生じる
エステル においの確認 果実のような香り 低分子エステルに多い特徴
エステル 酸性加水分解 カルボン酸 + アルコール エステル化の逆反応
エステル NaOH水溶液で加熱 カルボン酸塩 + アルコール けん化

酸性加水分解とけん化の比較

反応 条件 生成物 覚えるポイント
酸性加水分解 H₂O + H⁺ + 加熱 カルボン酸 + アルコール エステル化の逆反応
けん化 NaOH水溶液 + 加熱 カルボン酸ナトリウム + アルコール カルボン酸ではなく塩になる
酢酸エチルの酸性加水分解 H₂O + H⁺ 酢酸 + エタノール 可逆反応として考える
酢酸エチルのけん化 NaOH水溶液 酢酸ナトリウム + エタノール 反応が進みやすい

間違えやすい比較

比較 カルボン酸 エステル ポイント
NaHCO₃との反応 CO₂を発生する 通常発生しにくい 泡が出たらカルボン酸を疑う
におい 刺激臭をもつものがある 果実臭をもつものが多い においは補助的判断
水溶液の性質 酸性 中性に近いものが多い pHで比較できる
加水分解 対象ではない 酸とアルコールに分解 エステル結合の確認につながる

覚え方・暗記ポイント

カルボン酸はNaHCO₃でCO₂を発生する。
エステルは通常NaHCO₃でCO₂を発生しにくい。
低分子エステルには果実のような香りをもつものが多い。
酸性加水分解ではカルボン酸とアルコールができる。
けん化ではカルボン酸塩とアルコールができる。
酢酸エチルのけん化では、酢酸ではなく酢酸ナトリウムができる。
目次

1 カルボン酸とNaHCO₃の反応

カルボン酸は酸性を示すため、炭酸水素ナトリウムと反応して二酸化炭素を発生します。
このとき泡が出るため、カルボン酸を見分ける手がかりになります。
フェノールも弱酸性ですが、カルボン酸ほど酸性が強くないため、通常NaHCO₃とは二酸化炭素を発生しにくいです。
カルボン酸と炭酸水素ナトリウム
R-COOH + NaHCO₃ → R-COONa + CO₂ + H₂O
CO₂の発生がカルボン酸識別の重要な目印です。
確認ポイント
  • NaHCO₃でCO₂を発生する官能基を説明できる
  • カルボン酸とフェノールの酸性の違いを説明できる
  • 気体発生を識別反応として使える
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2 エステルの特徴

エステルは、カルボン酸とアルコールから水が取れてできる化合物です。
低分子のエステルには果実のような香りをもつものが多く、香料として利用されるものもあります。
ただし、においだけで物質を完全に判定するのは危険なので、反応結果と組み合わせて判断します。
エステル化
R-COOH + R'-OH ⇄ R-COOR' + H₂O
カルボン酸とアルコールからエステルができます。
確認ポイント
  • エステルの基本構造を説明できる
  • エステル化の反応式を説明できる
  • エステルのにおいを補助的な識別情報として扱える
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3 エステルの加水分解とけん化

エステルは水と反応して、カルボン酸とアルコールに分かれます。酸性条件で行う場合を酸性加水分解といいます。
一方、NaOH水溶液などの塩基性条件で加水分解すると、カルボン酸ではなくカルボン酸塩ができます。
この塩基性加水分解は、油脂から石けんを作る反応と同じ考え方で、けん化と呼ばれます。
酢酸エチルのけん化
CH₃COOC₂H₅ + NaOH → CH₃COONa + C₂H₅OH
生成物は酢酸ではなく、酢酸ナトリウムになる点に注意します。
確認ポイント
  • 酸性加水分解とけん化の違いを説明できる
  • けん化でカルボン酸塩ができることを説明できる
  • 酢酸エチルの分解生成物を判断できる
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